※本稿は、内藤誼人『振り回されない練習 「自分のペース」をしっかり守るための50のヒント』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

東レ元取締役が苦手な上司に取った行動

苦手な人とはなるべく一緒にいたくないものです。こっそり距離をとる、接する時間を極力減らす。そんな対応をしているのではないかと思われます。

拒否
写真=iStock.com/kazuma seki
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そんな対応の数々があなたのペースをかえって乱し、心の重荷を増やすことに繫がっているケースもあるのではないでしょうか。

そんなときは、考え方を変えてみましょう。苦手な人から逃げるのではなく、覚悟を決めて、懐に飛び込んでみるのです。

大手化学企業の東レで、同期トップで取締役になった佐々木常夫さんは、営業部に配属されたときの上司が本当に大の苦手とするタイプだったそうです。

そこで佐々木さんのとった作戦が、相手の懐に飛び込むこと。

「2週間に1度のミーティングを持ってください」

とお願いし、スケジュールを強引に押さえて、毎回30分、2人だけで話すようにしたそうです。ミーティングの時間を確保しておけば、我慢するのは2週間に1度。しかも30分。それ以外の勤務日には、上司を完全に無視できるのですから、残りの時間は自分のペースを保てます。

自分にとっては苦手でも、上司にとってはお気に入りの存在に

さて、ミーティングを始めて1年が経った頃、その苦手な上司はマーケティング部の部門長として異動していきました。佐々木さんが「よっしゃ、ようやく解放された!」と喜んだのもつかの間、すぐに佐々木さんも、その上司に呼び寄せられてマーケティング部に異動になったのでした。

次の部署でも同じミーティング作戦を実行し、なんとか乗り切ったものの、その上司がプラスチック事業部門長として転任した3カ月後に、やはり佐々木さんはその上司に呼び寄せられたのです。

ここにいたって佐々木さんはようやく気づきました。自分にとって上司は苦手なタイプでしたが、上司にとって佐々木さんは大のお気に入りだったのです。佐々木さんは、東レで自分がうまくいったのも、その上司のおかげだと述懐しています(佐々木常夫著、『決定版 出世のすすめ』角川新書)。