※本稿は、安川新一郎『ブレイン・ワークアウト』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
リモートワークで感じる不安や孤独感
あなたは、1日誰とも話さない日があるでしょうか? または、家族や仕事仲間と最後に日常会話以外のことをじっくり話したのはいつでしょうか?
リモートワークは時間効率や、生産性改善やワークライフバランスの点でメリットも多いと思いますが、7割以上の人が会話や雑談をする時間が減ったことを認め、そのうちの4割近くが、ちょっとした不安や孤立感を覚えています。
またコロナ禍に学校がオンラインになったことで、自宅や下宿での引きこもり状態を余儀なくされた学生の多くが、孤独やうつ症状を訴えました。秋田大学の調査によると、オンライン授業期間中の2021年に学内アンケートを行った結果、16.6%に中等度以上のうつ症状、11.5%に死にたいと思う「自死念慮」が見られ、2020年5~6月に実施した初回調査の数字をそれぞれ大幅に上回っていたと報告されました。
孤独の健康への害は、1日15本のタバコと同程度
独居老人の増加、晩婚化や未婚化の進展の結果、2040年には全世帯に占める「1人暮らし」の割合は39.3%と予測されています。また、少し前のデータ(2012)になりますが、国立社会保障・人口問題研究所の「65歳以上の世帯タイプ別・会話頻度」のアンケート調査によると、65歳以上で1人暮らしの男性の18.3%、女性の24.9%が、2~3日に1回しか誰かと会話をしていません。
この属性の男性の16.7%に至っては2週間に1回以下しか会話していません。近所付き合いも勤め先もなく、コンビニや外食で食事を済ませほとんど会話せずに生活しているのかもしれません。
日本のおじさんは、世界一孤独と言われています。男性全体の生涯未婚率は29.5%(2030年予測)で「ほとんど、もしくは人に会わない人」の割合は17%と、OECD加盟国平均の2倍に上ります。
単身者世帯が増加しているなかで、日常的なコミュニケーションがなく孤独を感じている人が増えつつあります。内閣官房孤独・孤立対策担当室が行った人々のつながりに関する基礎調査(令和3年)では、男性単身者の59.2%、女性単身者の47.4%が、孤独感が「常にある」もしくは「時々ある」と答えています。イギリスで孤独担当大臣が新設されるきっかけとなった「孤独はタバコを1日に15本分喫煙することと同じ程度、健康への害を与える」という報告書は有名です。