負の感情がシェアされ、ただただ消費されている

こうした階級社会における庶民の不満は、これまでも様々な形で存在していました。しかし今は、SNSによって、小さな不満すら可視化され、大きな流れを生みます。論点は単純化され、人々の理性的な意見というよりは、匿名のアカウントからの感情的な反応で、ヘイトもフェイクニュースもシェアされ、うねりのように拡散していきます。

そのような自分の身体の中で発生したマイナスの感情、煩悩や苦しみ等を外に出すとしても、これまでは本人が自分の言葉でその場で発言し、その発言は一定の人間関係の中の噂話で止まっていました。

それが、SNS空間では、本人の身体性やコミュニティから切り離された感情的な文字が、徐々に意味や形を変えながら拡散していきます。複雑な内容の記事も読まずに、記事のタイトルだけをみて芽生えた「けしからん」とか「ザマアw(草)」といった負の感情がシェアされ、ただただ消費されていきます。

SNSアプリのアイコンが並ぶスマホの画面
写真=iStock.com/P. Kijsanayothin
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孤独が恒常化すると攻撃的・反社会的な性格になりやすい

その連鎖は、複雑な社会を単純化します。共和党支持者か民主党支持者か、保守かリベラルか等で分断し、それぞれはそれぞれの主張を裏付けるテレビ番組のみを視聴し、アカウントをフォローし、分断は益々広がる傾向にあります。

世界で29億人と繫がれるFacebookや、26億人が使っているYouTubeを利用していたとしても、世界の人々と繫がっているようで誰とも繫がっていない私達の多くは、孤独に苛まれています。リアルな人間とは本当の意味で触れ合っていないし、話せていないからです。

孤独が恒常化すると人を嫌いになり、攻撃的・反社会的な性格になりやすいと言われています。銃乱射事件やテロの犯人に共通するのは、社会との接点がなく孤独な生活を送っていた人たちです。そしてその動機は世界共通です。「誰も自分の話を聞いてくれなかった」と。