ここ数年で職場環境は大きく変化している。リクルートワークス研究所の古屋星斗さんは「われわれの調査結果によると、かつて日本の上司は『叱責型』が多かったが、現在は多くが『褒める型』に移行している。しかし、この大きな変化に対して、『自分の頃と同じように育てられない』と悩むマネジャーも少なくない」という――。

※本稿は、古屋星斗『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』(日本経済新聞出版)の第5章「若手を育成できる管理職、できない管理職」の一部を再編集したものです。

オフィスで話す若い女性と中年の男性
写真=iStock.com/Masafumi_Nakanishi
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職場環境が激変し、若手育成が困難に

多様化・多極化する若手と急速に変わる職場環境。ここ数年で顕在化した「ゆるい職場でどう育てるのか」という新しい課題。2010年代後半以降、急速に変化した日本の職場において、若手をどう育成していくべきか。その方向性を探るべく、筆者は様々な調査を実施したり参画したりしてきた。

第5章では、職場環境変化の影響をいち早く受けた大手企業で20代社員のマネジメントを直接行っている課長級管理職を対象とする調査を中心に、現代の若手育成とマネジャーの介在についてわかってきたことを紹介する。現代日本に現れた新しい「若手と職場の関係性」について、若手を育てる者たちの目線から検証する。

後に詳しく触れるが、いま若手育成は構造的に困難な状況にある。それは若者の多様化・多極化と職場環境の激変に端を発して、具体的に言えば育てる側のマネジャーたちが「自分たちが育ったやり方と全く違う方法論で若手を育てなくてはならない」という難しさである。筆者は、若手育成における、もう一方の忘れてはならない“当事者”としてマネジャーに注目している。

若手を育てる当事者「マネジャー」への調査

調査については、管理職の若手育成に関する定量調査として、1000人以上の従業員規模の課長級管理職(正規の社員・従業員である者)、29歳以下・正規社員の部下を1名以上持つ者を対象として実施した。実施時期は2023年3月17日〜20日、無効な回答を除外しサンプルサイズは1083であった。

調査対象の属性を整理する(図表1)。回答者は年齢では50代が最も多く54.6%、次いで40代が35.8%であった。性別では男性がほとんどで95.3%である。

筆者もさすがに男性が多すぎると感じたが、近年の類似調査でも大企業の女性管理職割合は同様の値としている調査が多くあり(例えば、2022年の帝国データバンクの調査では大企業の女性管理職割合は6.8%であった)、現在の大手日本企業の回答割合として妥当な数字と判断できる。業種、従業員規模については図表1を参照いただきたい。

また、部下のマネジメントをする「課長」の経験年数についても掲載しておく(図表2)。最も多いのは10年〜15年未満で20.3%、続いて7年〜10年未満が17.0%、3年〜5年未満が16.8%であった。ベテラン管理職から比較的年数が浅い管理職まで回答を得ている。