パーソル総合研究所が実施した調査で、日本は「はたらく幸せ実感」が世界最下位だった。その原因はどこにあるのか。パーソル総合研究所の井上亮太郎さんは「日本人は異質な他者への寛容性が低い傾向にある。寛容性は、はたらく幸せ実感と相関の強い観点であり、日本の就業者の幸福感が低い要因の一つと考えられる」という――。

「はたらく幸せ実感」1位はインド、日本はワースト1位

筆者らは、就業者が働くことを通じてどれほど幸せ/不幸せを感じているかといった職業生活における主観的幸福感に関する調査を18の国と地域で実施しています。最新の調査結果(2022年度)では、「はたらく幸せ実感」が最も高かった国はインドでした。次いで、インドネシアなど東南アジアの国々が続きます。残念ながら、日本は18カ国・地域中で最も低い結果(ワースト1)です(図表1)。

では、もう一方の「はたらく不幸せ実感」はどうでしょうか。日本は、3番目に不幸せ実感が低く、他の国・地域と比較してもかなり良好なスコアであることがわかります。ただし、年代別に見ると日本は20代・30代の若年層の幸せ実感が低く、不幸せ実感が高い傾向が見られました。他方で、はたらくシニア層の状態は比較的良好でした。

ちなみに、幸せ実感が最も高かったインドは、不幸せ実感も最も高く、その振れ幅が大きいことが見て取れます。また、国際的に幸福度が高いと言われている北欧のスウェーデンは、「はたらく幸せ実感」では中位にあり、「不幸せ実感」は2番目に高い傾向を示しているのは興味深い結果です。

このように、日本人は主観的な幸福感を尺度でたずねると控えめに評価し、では不幸なのかと問えばそうでもなさそうです。国際文化比較の研究では、日本人は「人並み感」を好み、「ほどほど」がちょうどいいと考える傾向が指摘されています。また、日本人のアンケートへの回答傾向として、極端な評価はつけず「どちらでもない」といった中庸を選択しやすいことも報告されています。本調査についてもこれらの文化的傾向が表出していると考えることもできそうです。

木製の立方体
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