自社のマーケティングを強化しようと人材を集めたのに成果が出ない。なぜか。グロースX・COO、インサイトフォース・取締役の山口義宏さんは「マーケティングの施策領域ごとに専門家を集めて最強のチームができたとしても、成果が上がらないことはよくある。そこには2つの落とし穴が隠されている」という――。
※本稿は、山口義宏『マーケティング思考』(翔泳社)の一部を再編集したものです。
専門家チームが見落としがちなこと
マーケティング施策のプロが集まっているのに、なぜ成果が出ないのか。
この問いに素直に答えると「施策の領域が増えて専門性が分断したなら、展開する施策領域ごとに専門家をチームに引き入れればいい」という話になります(図表1)。そのような専門家は、社員の場合もあれば、フリーランスや広告代理店への業務委託の場合もあるでしょう。お金のある会社は、そのように専門領域ごとに採用や外注で手当てをします。
これは一見、非常に良い解決策に思えます。しかし、このチームの布陣をそろえたはずなのに、マーケティング施策の展開で成果を出せないままの企業はたくさんあります。
理由は、「各領域の施策の知識を持ったプロが集まったチーム」の布陣では見落とされがちな落とし穴が2つ潜んでおり、その手当てができていないためです。
マーケティングチームが陥る2つの落とし穴
マーケティングチームが陥ってしまいがちな落とし穴は次の2つです。
1.各施策の指針になる「誰に?(顧客理解)」と「何を?(顧客価値)」が不在で、4P施策のアウトプットがずれ、施策で顧客の心と行動の変容ができず、成果が出ない
2.「何らかの施策を上手にやる」以前の判断として「そもそも、どの施策に投資配分して展開するか?」や「どの施策と施策の間の一貫性・連携が大切か?」という、4P施策への投資の全体最適化を担う指揮者が不在で成果が出ない
この落とし穴の話は非常に重要なので、一つひとつ説明します。