データに直に当たり、分析することで解決策が見えてくる例はほかにもある。その一つは、CO2排出量の削減である。

2009年9月、鳩山元首相が国連気候変動サミットの開会式で、「日本は20年までに、CO2排出量を1990年比で25%削減する」と約束した。これに対して、「産業界の手を縛るものだ」という激しい非難も寄せられ、25%削減はとても無理だというムードができつつあった。

しかし、この問題についても多くの人が表面的な情報に流されてしまっていると言わざるをえない。私の見方はまったく逆である。25%削減は日本が筆頭になってやるべきだし、やれるはずだと思っている。

削減可能と断言する根拠は、自分で集めたデータにある。まず、CO2削減のためにはエネルギー消費を抑える必要がある。エネルギーが消費される場面は、大きく3つに分けられよう。

ひとつはエネルギー転換(その多くは発電)であり、もうひとつがものづくり、最後が日々のくらし。さらにいうと、発電で生じたエネルギーは後の二者のどちらかに配分される。

そう考えて計算すると、日本の場合、ものづくりに45%、日々のくらしに55%のエネルギーを消費している(図2右)。どこのエネルギーを減らすべきかは明確だ。全体の半分以上を占める「日々のくらし」分野である。

というのも、日本のものづくりではすでに相当エネルギー効率がよくなっているからである。

ものづくりに比べて遅れているのが、日々のくらしのエネルギー効率の改善だ。たとえば日々のくらしのひとつ、家庭におけるエネルギーの消費分野と割合を調べると、図2(左)のとおりとなる。

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図2 CO2削減の本質とは?/図3 じつは見かけに騙され、合理的に判断できていない人は多い

ここにも、多くの人が気づいていない視点がある。家庭のエネルギー消費において、次の3つのことを提案したい。

一つは家電の買い替えである。私のケースでいえば、2年前に自宅の冷蔵庫を新しくした。定価20万円のものが量販店で14万円だった。最新のものは古いものに比べて、エネルギー消費が3分の1になっている。これをお金に換算すると、年間2万円の電気代が節約できる計算になる。14万円で買った冷蔵庫は、7年で元が取れるというわけである(図3)。

エアコンやテレビでも同様のことがいえる。「まだ使えるものを捨てるのはもったいない」という人がいるかもしれない。服などについては同感だが、家電の場合はエネルギーとセットで考えなければならない。捨てた冷蔵庫はリサイクルされても、古い家電を使い続けることで日々使われるエネルギーはただ無駄になる。そのほうがよほどもったいないと考えるべきだ。