金持ちはなぜタワマンを買うのか?
高額所得者の代名詞とされる高額なタワーマンション。ペントハウスなど高層階の高額物件からまず売れていくから不思議だ。だが、高額なほど金持ちの自尊心を満足させるから売れていくと思うのは早計だろう。
金持ちほど“ケチ”であるのは世の東西を問わない世界共通の真理だ。“ケチ”だから、税金を納めたくないからこそ高額なタワーマンションを買うのだ。カラクリは不動産の評価額の差を利用した節税効果にある。その不動産を利用した過度な相続節税にメスが入ろうとしている。
12月16日、与党税制調査会がまとめた「令和5年度税制大綱」の中に「マンションの相続税の評価について」という一項目が盛り込まれた。
「マンションについては、市場の売買価格と通達に基づく相続税評価額とが大きく乖離しているケースが見られる。現状を放置すればマンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある。
このため、相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価評価の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」という内容だ。いわゆる「マンション節税」にメスを入れるという意思表示にほかならない。
「相続税0円→3億円の追徴」が認められた
この与党税調による「マンション節税」封じ込めには伏線があった。22年4月に出された最高裁の判決だ。路線価などに基づいて算定した相続マンションについて、最高裁は4月19日、国税当局が再評価して追徴した処分を適法と認め、相続人側の上告を棄却した。
訴訟となった事案は、相続人が2012年に父親から東京都内などのマンション2棟を相続し、路線価を基に評価額を計約3億3000万円とした上で、購入時の借り入れと相殺して相続税を0円と申告した。この申告に対して国税は評価額が実勢価格より低すぎるとして、12億7300万円と再評価し、約3億円を追徴したもの。
裁判の争点は、不動産の「時価」の算定にあった。「不動産は一物三価と呼ばれ、同じ物件でも3つの価格があります。土地取引データに基づいて算定する地価公示・地価調査、相続税の評価基準となる路線価、そして固定資産税評価額の3つです。路線価はおおむね地価公示・地価調査の8割、固定資産税評価額は同7割とすることが定められています」(大手信託銀行)とされる。