副業をする人が増えている。その一方で、サラリーマン経験しかなく、独立を果たしても確定申告でミスをして追徴課税の憂き目に遭う人も増加している。近著『あんな経費まで! 領収書のズルい落とし方がわかる本』が話題の元国税専門官、小林義崇さんは「『儲かったから節税しよう』という安易な考えが、そもそも落とし穴にハマる原因です」という──。

動画制作の副業から独立を実現

吉田久さん(仮名、38歳)は、今から5年前、映像関係の会社に勤めるかたわら、企業やYouTuberを相手に動画制作を手伝う副業を始めた。

最初こそお小遣い稼ぎのつもりだったが、仕事の依頼はだんだんと増えていく。週末の副業では時間が足りないと思った吉田さんは、35歳になったのを機に、一大決心をしてフリーランスの動画クリエイターとして独立を果たした。

その後、実績を積み重ねるにつれて吉田さんの収入は伸びていった。

独立初年度は退職金を取り崩しながらの生活だったが、3年目に知り合いを通じて大きな企業案件を獲得。年商1000万円の大台が見えてきた。

「税」という重いおもしにつながれた人の足元
写真=iStock.com/pagadesign
※写真はイメージです

「儲かった」と思ったら税金が…

“雇われない生き方”を実現できていることに満足し、「そのうちFIRE(経済的自立と早期リタイア)できるかも」と気持ちは高まっていくばかり。「独立して良かった」と吉田さんは心から感じていた。

ところが、吉田さんの興奮はすぐに冷めることになる。好条件の案件を受注したことをフリーランス仲間との忘年会で打ち明けたところ、「税金が結構大変になるぞ」と言われてしまったのだ。

吉田さんは税金にうとい。会社員時代に年末調整で税金の手続きを行っていたが、会社から言われるままに書類に記入するだけで、それ以上税金について深く考えることはなかった。

そんな吉田さんも、独立すると確定申告が必要になる。1月1日から12月31日までの売り上げや経費などを集計して、翌年の3月15日までに確定申告をする。吉田さんは、国税庁ホームページから利用できるシステムを使って申告書を作成した。