東京都多摩地域の駅徒歩5分以内の分譲マンションに住む、世帯年収1000万円の3人家族。40代夫婦は節約に努め、iDeCoやつみたてNISAでコツコツ資産を増やしているが、なぜか貯金は目減りする一方。そこで東京23区内に住み替えて、売却資金を元手にバリバリ投資して資金を倍増させようと計画するが、FPの横山光昭さんは「待った!」を出した――。
集合住宅の前でかざす鍵
写真=iStock.com/simpson33
※写真はイメージです

「節約もポイ活もしている」が貯金が増えない

「自分なりには節約も資産形成もしているつもりなんですけど……」

会社員の夫(42歳)を持つ、パート勤務の岡本聡子さん(仮名・40歳)は浮かない顔です。

夫は手取り月収約59万円(年棒制でボーナスなし)の人気塾講師。聡子さんは来年、公立小学校に進学する一人息子が幼稚園に通う間の3時間、時給1110円のパート勤務をしていて、手取り月収は約6万7000円。合わせて手取り月収65万7000円、年収は額面にして約1000万円あります。

ご本人いわく、電気代を少しでも安くすべく電力会社を替えたり、スマホの料金プランを変更したり、ポイ活をしたりと、いろいろ工夫はしている。さらに、iDeCoやつみたてNISAを毎月8万円近く積み立てていて、節約も資産形成もがんばっていると、力説します。

にもかかわらず、なぜか預貯金が思うように増えず、現在300万円足らず。それも急な出費で毎月のように切り崩してしまうことが悩みなのだと、肩を落とします。どうやら、支出の中身に問題ありそうですが、聡子さんには一発逆転できる「切り札」があるとか――。

「マンションを売却すれば軌道に乗る」という思い込み

その切り札とは、現在住んでいる駅前不動産を売却することだと、聡子さん。詳しく話を聞いてみました。

「できれば子供が小学校に入る前に、今住んでいる駅前の分譲マンションを売却しようと考えているんです。今のマンションは駅から徒歩5分以内の好立地なので、5000万円で売れると聞いたんです。すると、今のローン残高が3200万円だから、1800万円のプラスになるでしょ? その売却益を元手に、ドカンと投資すれば資産倍増ですよね!」

売って、どこにどう住むのか? と聞くと――。

「住む場所は23区内の中でも財政豊かな区にします。自治体独自の手当や補助が手厚い区に住めば、教育費や医療費でも“お得”ですよね。

10万円くらいの賃貸物件にしようかなと。今の住宅ローン月16万3000円より安い賃料にすれば黒字額を増やせますよね。将来的にも、2人目を授かり、家族が4人に増えたら、今の1LDKでは手狭だから3LDKに住み替えざるを得ないですよね。

それなら高く売れる今のうちに売却して、広めの賃貸物件に住み替えた方がいいと思うんです。固定資産税や修繕積立金や管理費、ローンの金利を払うことを考えても、賃貸と分譲、トントンだって聞きますしね」

将来をイメージして目を輝かせる聡子さん。でも、ちょっと待ってください。私に言わせれば、気持ちは前向きでいいのですが、いまひとつ現実味がないプランです。シンプルに言えば、甘い。甘すぎるんです。

ひとつずつ、問題点を整理しましょう。