問題①マンションの売却益は意外と低い

まず、今住んでいるマンションの売却益を元手に投資したいという点。

「駅前不動産を5000万円で売ったら、ローン残高3200万円を差し引いておよそ1800万円のプラスになる」という主張ですが、マンションを売ったら売買手数料もかかりますし、利益はせいぜい1300万円程度出れば御の字では。さらに、そこから転居に伴う初期費用が、ざっと見積もって100万円程度かかることも忘れてはいけません。

「売ったお金でマンションを買うのではなく、賃貸物件に住みながら、売却益を元手に資産を増やしていきたい」という計画も、きわめて楽観的です。現在お住まいのマンションは築浅で駅前の優良物件。そこから3LDKの賃貸物件に引っ越したいと言いますが、23区内で3LDKだと、安くても15万円、地域によっては20万円かかる可能性もあります。

それも現在のグレードに近い築浅、駅近物件を探すと、20万円どころでは済まない場合も。仮に家賃20万円だとして、現在の住宅ローンより+4万円も多く払えるのでしょうか。あるいは、マンションのグレードや条件を落として10万円物件に住んだ場合、そのストレスで旅行や衝動買いが増えないか心配です。

アパートの管理員室
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問題②投資ビギナーが大金を元手に運用するのはハイリスク

次に、投資への考え方について。最近、聡子さん宅のように、売却益を元手に投資をしたい世帯が増えているのですが、大金を投資に充てるにしては、投資リテラシーがどこまであるかいささか疑問です。

相談当時のヒアリングでは、聡子さんご夫妻はiDeCoとつみたてNISAを1年ほど続けたばかりの投資ビギナー。「運用益が非課税になるというし、やっておこうと思った。内容も、国内株式インデックスがいいというから、それにしておいた」といった聞きかじりの知識で、何年後までにいくらためたいという具体的な資金計画もない様子。そのような状態でポンと転がり込んだ1000万円超の売却益を元手に投資するのは極めて危うい。