夫婦の手取り月収が計46万円あるにもかかわらず、4人の家族には浪費癖があり、一時借金が300万円に膨らんで任意整理を余儀なくされた。ところが、この崖っぷちから月10万円以上の黒字家計に転換。家計再生コンサルタントでファイナンシャルプランナーの横山光昭さんはいかなる秘策を伝授したのか――。
買い物かごいっぱいの食料品
写真=iStock.com/monticelllo
※写真はイメージです

収入不安定、金食い虫の家族、借金の三重苦

相談者は、コールセンターで夜勤ありのパート勤務をしている安田聡子さん(仮名・45歳)。家族は、飲食店に勤務する夫(46歳)、フリーターの長女(25歳)、大学1年生の長男(19歳)。世帯の手取り月収は平均46万円(夫34万円、妻12万円)あるものの、生活のやりくりのための借金が300万円にも膨れ上がった結果、数年前に任意整理(※)に追い詰められた経緯を持ちます。こうした事情もあり、今年の4月、将来の生活に不安を持ち、聡子さん一人で来社されました。

※弁護士、司法書士などの専門家に債権者との交渉を依頼して、債務の額を確定させて(高い利息だった場合、金額が減ることやお金を取り戻せることもある)、支払い可能な毎月の支払額を合意して支払っていく方法。

任意整理することで、いわゆるブラックリストに載って信用情報機関に記録されてしまい、一定期間新規のローンやキャッシングができなくなる、連帯保証人になれないといった状況になるケースもあります。

そもそも、なぜ世帯月収が手取り46万円もあるのに、これだけ生活が苦しいのか。話を聞いていくと、聡子さん一家の家計には、主に3つの“病巣”があることが分かりました。

一つは、収入の不安定さ。夫婦ともにボーナスはなく、夫は残業の時間数によって、妻は夜勤の頻度によって、それぞれ月の収入が5万円前後変動するのです。そのため、夫婦ともに収入が少ない月が重なると、平均月額より10万円程度の収入減になることもあります。収入の変動が激しいため、ひと月にいくらまで使っていいのか予算を立てにくく、結局使えるだけ使ってしまう傾向があるそうです。

次に、家族の節約の意識が薄いこと。基本的には大きな無駄遣いはしていないものの、子供がテレビや電気をつけっぱなしにしたり、シャワーを1日に何度も浴びたりして光熱費を湯水のように使う。「汗をかいたは毎日取り換えないと不潔だ!」と言い、洗濯物もお構いなしに出してくる……。

また、聡子さんが夜勤に行く日は、夫が夕飯の準備を担当するのですが、これもザル家計の要因に。買い物に行ったついでにカップラーメンやお菓子、ビールなどの嗜好品、また牛肉などの高額な食材まで手あたり次第買い物カゴに入れてしまう悪癖があるのです。

入るお金は少なく不安定なのに、出ていくお金は安定して多い。こうした日々が積もり積もって、300万円もの借金につながったわけです。数年前に任意整理したとはいえ、借金がチャラになったわけではありません。相談時の返済額は毎月5万円。収入不安定、金食い虫の家族、借金。この3つの病巣を抱えたままでは、本当に破綻してしまう。

不安に駆られた聡子さんは2年間がむしゃらに働き、孤軍奮闘で400万円の貯金を作り、長男の大学費用を工面したと言います。これで教育費の問題はクリアできました。