営業マンに勧められるままに加入したのは、実はさまざまな手数料がかかり、ドル建てで運用する保険だった。そんな事例が増えている。家計再生コンサルタントのFP・横山光昭さんは「入社間もない20代の若い世代もこうした商品のターゲット。『投資デビューしたい、将来のためにお金を貯めたい』という気持ちが強い一方、マネーリテラシーが高くなく、営業トークに乗せられてしまう」という――。
5枚の1万円札を差し出す人の手元
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「保険で貯めようとしている娘が心配で…」

今回相談に来たのは、都内で一人暮らしをしているケイコさん(仮名・24歳・会社員)。

父親(58歳・会社員)は以前、弊社の「実行支援プログラム」に通い、お金の使い方を見直して投資をスタートした経緯があります。その後、一人娘のケイコさんが就職して約2年経ち、「今度は娘の資産形成の相談に乗ってやってほしい」と連絡をくれました。

ケイコさんのお金の使い方は慎重派。住んでいる賃貸マンションはセキュリティを重視したため、手取り収入(24万円)の割にはやや高めの家賃(8万5000円)ですが、それ以外は堅実です。格安スマホを使い、お昼は手作りの弁当持参で食費を抑え、服や化粧品はプチプラ系を買う……などしっかり節約しています。

ところが、若い世代にしては突出して高い費目がありました。それは生命保険料の2万5000円です。24歳の独身で、なぜこれほど高額な生命保険に入る必要があるのか? 不思議に思う方もいるでしょう。

実は今、高額な生命保険料を払っていることを不安に思い、相談にくる若い世代が増えています。その多くが、保険会社に勧められるままに、「貯蓄目的」の外貨建ての終身保険や保険会社に運用を任せる変額保険に加入していたというケース。

ケイコさんもまさにこれで、それもドル建て変額終身保険に入っていました。変額保険とは、支払い保険料から諸費用を差し引いた金額を、保険会社が株式や債券、投資信託などで資産運用し、その運用実績に応じて、死亡保険金や解約返戻金、満期保険金が変動する生命保険のことです。

運用がうまくいけば定額型の貯蓄型保険よりも受け取る満期保険金額や解約返戻金額は多くなりますが、うまくいかなければ少なくなるというリスクがあります。

ケイコさんに対して知人の営業マンはこう売り込んできたそうです。

「今のインフレ時代、銀行に預けてもお金の価値は下がる一方。投資で運用しないとお金は増えない」
「円安の今、資産を円で持つよりドル建てで持ったほうがいい」
「投資より保険の方が、生命保険料控除で節税にもなるし、死亡保障もあるからお得な上安心感が大きい」

よくある営業トークでしたが、真面目で素直な性格のケイコさんは、「節約して余った数万円の一部を、資産形成に充てたい」と考えていたこともあり、それならばと、言われるままに加入。私からすれば、保険会社の常套セールストークにまんまと引っかかってしまったということになります。

実は父親がケイコさんを紹介したのも、変額保険に入ったことで「投資デビューができた」と思い込んでいる娘が心配だったから。「投資信託と、変額保険の運用、違いは分かる?」とケイコさんに聞いても、首を振る。「それなら、プロにちゃんと教えてもらったら?」とのアドバイスで、相談に来られたというわけです。