保険と投資、実入りが圧倒的に多いのは?

ケイコさんに限らず、貯蓄型生命保険を検討している人は、こうしたメリット、デメリットを天秤にかけて判断をすべきです。私の考えでは、保険は保障、投資はETFや投信と、区別する方がシンプルで、コスパもいい。

保障が気になるなら、別途、医療保険に加入すればよいことです。実際、ケイコさんは私どもの提案で、生命保険を解約し、掛け捨ての医療保険に入り直しました。

「保険を途中解約することで、これまで払ってきた保険料より解約返戻金が下回る“元本割れ”が起きて、数万円、数十万円の損失が出るのではないか?」
「生命保険控除が使えないのはちょっと惜しい」

――そう考えて、解約に二の足を踏む人もいるかもしれません。

それでも、保険より自分で投資して運用した方が利益率は高いケースが多い。金融庁の「資産運用シミュレーション」ツールで試算すると、NISAで毎月3万円を利回り3%、30年間積み立てた場合、元本は1080万円、運用収益は668万2000円という結果が出ています。

ましてやケイコさんの場合、まだ24歳で、残りの運用期間は40~45年近くあります。そうなると、時間を味方につけて自分で運用した方が圧倒的に実入りはいいですよね。実際私自身、投資信託を運用して20年以上経ちますが、コロナショックで一時期30%あまり落ちたときでも、「元本」と「収益」に分けて言えば、損失は「収益」の範囲内(一部)で済みました。

こうしたことも踏まえ、ケイコさんに「これまで生命保険に充てていた金額の一部に加え、家計を見直して積立額を増やせれば、もっと資産を増やしていける可能性があります」と提案しました。

すると、ケイコさんは取捨選択をして、これまでなんとなく使っていた被服費や交際費、推し活の娯楽費などを見直し、トータルで3万7000円を削減。毎月の黒字額は約2万3000円から約6万円へ増えて、iDeCo(2万3000円)とNISA(つみたて投資枠・3万7000円)をそれぞれ積み立てています。

【図表】メタボ家計BEFORE⇒AFTER

新社会人の子がいる親に知っておいてほしいこと

社会人になって2~3年経ち、貯金も少しずつ増えてきた頃、資産形成を考える人は少なくありません。そのタイミングを狙ってくるのが保険会社や金融機関の営業マンです。こうしたところに相談すると、言い方は悪いですが、ケイコさんのようなマネーリテラシーがやや乏しい一方、資産形成に意欲的な人は、カモになってしまう可能性が高いのです。保険会社や金融機関は犯罪行為をするわけではありませんが、加入するかしないかは慎重にならないと金をむしり取られるだけです。

もし、読者の中に、このケイコさん世代、もしくはケイコさん世代の子供からの資産形成の相談をされている親世代がいたら、どうか金融機関とは関わりのない中立的なFPなどからのアドバイスを受けてほしいと思います。

実際、私どもの事務所には、親御さんから紹介されて相談に来る20~30代の社会人が増えています。親子で一緒に相談に来るケースも多いです。

お金の相談に行くのはまだ早い? とんでもありません。今の世の中、マネーリテラシーは不可欠です。極端に言えば、偏差値の高い大学に入るのと同様、あるいはそれ以上に必要な知識かもしれません。

大企業に就職して高い給与をもらっていても、お金の知識がないばかりに、40代を過ぎても資産が全然手元に残らない人がいる一方で、手取りの給与が低くても毎月コツコツと賢いやり方で資産を形成する人もいます。どちらが生きていく力が高いかは明白です。

社会人になった子供にあれこれ口出しするのは無粋ですが、お金の作り方と守り方を教えることは現代の親の務めといえるでしょう。(構成=桜田容子)

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