この春、子供の進学や、転勤、転居などで生活が変わる家庭もあるだろう。家計再生コンサルタントでFPの横山光昭さんは「このタイミングで実施するといいのが、家計の見直し。しないと、知らずのうちに赤字家計を放置して、老後破綻の道を歩むこともある」という。2人の子供を育てる40代夫婦世帯の事例をもとに詳しく解説してもらった――。
薄暗い部屋で俯く女性
写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
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子2人は「大学から私立」のはずが…

今回紹介するのは、想定外の出来事が続いた一家の事例です。

工藤タケルさん(仮名・42歳会社員)・ユリコさん(仮名・41歳派遣社員)夫婦は、家計管理においては計画して貯金ができる、堅実なタイプ。5年前にマンションを購入する際には、FPさんにライフプラン表を引いてもらったそうです。

ライフプラン表とは、出産や自宅購入、子供の進学、退職といったライフイベントと、それに応じた支出と収入、つまりお金の動きを老後まで時系列に落とし込んだ一覧表です。

夫婦は2人の男児を育てています。ライフプラン作成当時、子供は小学生。教育費は、長男の大学入学時に跳ね上がることを想定しました。その時の手取りは、夫婦合わせて月56万円程度だったので、マンション購入の頭金も順調に準備でき大学進学までは順調に貯金もできる比較的余裕のあるマネープランでした。「これなら、子供2人が私大に進学しても老後資金は十分まかなえる」。そう考えた工藤さん夫婦は、先取り貯金をしつつ、割と自由なお金の使い方をしてきたそうです。

ところが、ライフプラン表を作った2年後、その“希望的観測”が音を立てて崩れ始めました。まず、長男が突然「中学受験をしたい」と言い出し、小学3年の2月から3年間の通塾で約300万円飛んでいきました。無事、希望の私立中学に合格して進学しましたが、学費は年間100万円超。覚悟はしていたものの家計圧迫は明らかでした。痛かったのが、次男も「お兄ちゃんと同じ学校に行きたい」と言い出し、通塾が始まったこと。やる気があるのはうれしい一方、正直、痛し痒しという気持ちだったという。

東京都が来年度(2024年度)から私立を含む高校などで授業料の実質無償化を始めることは、夫婦にとっては願ってもない朗報ですが、中学受験期の塾代や私立中学の学費負担はとても大きいものです。

さらに、時を同じくして、正社員だったユリコさんがコロナの影響で失職し、半年間の求職期間を経て、派遣社員として働くように。ユリコさんの手取り年収は正社員時代の300万円から、150万円に半減しました。マンションのローン返済10万5000円は容赦なく口座から引き落とされますし、その他の生活費もかかり、赤字家計へ転落しました。

激減した収入を貯金で補う日々。目減りしていく貯金通帳を見て、「一度、現在の家計状況を見てもらおう」と、私どものところに相談に見えたというわけです。