まさに爪に火をともすような暮らし。手取り月給の4割を貯金・投資へ回しているのにリターンが今ひとつないのはなぜか。家計再生コンサルタントでFPの横山光昭さんは「投資に前向きな人が増えてきているいま、やり方を見直すべき人は少なくありません」と指摘する。今回は、地方在住の45歳独身女性会社員の家計簿を診断してもらった――。
10万円を手に持って見つめる人
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金融機関のアドバイスに従った結果、利益はごくわずかに

今回相談に見えたのは、地方で一人暮らしをしている黒石智子さん(仮名・45歳・会社員)。5年前から勤務先や銀行の勧めで投資も行い、すでに約1600万円もの資産があるという、一見マネーリテラシー高めの女性です。が、ふたを開けてみると、結果的には“残念な投資”になっていたのです。

黒石さんの資産形成の内訳は、こうです。現在の手取り月収は25万円、ボーナスは年50万円で、手取り年収は400万円。独身ゆえに、山梨県の都市部で賃貸物件に一人暮らししながら、将来のために20代から何となく毎月5万円を定期預金口座に先取り貯蓄してきました。

また40歳になった頃、会社の勧めで企業型DC(企業型確定拠出年金)をスタート。会社が主催した企業型DCの説明会で「5~6本の商品を組み合わせた方がいい」と聞いて、定期預金35%、保険35%、国内債券多めの投資信託を10%ずつ――というように、元本確保型(定期預金と保険)に7割、価格変動型(投資信託)に2割という配分で月約2万円分を積み立ててきたそうです。

さらに、同じ頃に定期預金口座を持っていた銀行から「定期預金では金利も低く、なかなか増えませんよ」と勧められて、月3万3000円でつみたてNISAも開始。商品は「何を買ったらよいか分からないなら、バランス型もひとつですね」とのアドバイスに従い、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式が入ったバランス型の商品を購入したそう。

とまあ、定期預金5万円、企業型DC2万円、つみたてNISA月3万3000円を合わせて月10万円超を投資にまわしてきました。うち、企業型DCは給与から天引きされているため、家計の中からは月約8万円を捻出してきたことになります。

さて、それから5年経過――。45歳になった黒石さんが我々のオフィスにご相談に来られました。相談内容は「思ったより投資成績が悪い」こと。やり方が間違っているのではないかと、方向性を確認しに来られたのです。

「この5年間で、企業型DCとつみたてNISAの掛け金として毎月約5万円ずつ積み立ててきたから、だいぶ増えているはずだと期待していました。ところが、数年ぶりに残高確認したら、元金300万円のところ、9万円くらいしか増えていなかったんです。世の中、投資に関しては景気のいい話であふれているのに……。それで先生の本を読んでみたら、もしかして私のやり方が間違っているんじゃないかと不安になって。先生、私どうしたらいいんでしょうか? 教えてください!」