40代のバツイチ同士の再婚はすぐ破綻した。夫はヒモ状態にもかかわらず、フルタイムで家計を支える妻に対して日々罵詈雑言を浴びせた。連れ子とともに実家に戻った妻は離婚を決意。夫に伝えると、「離婚はしない、慰謝料300万円を請求する」と。夫は異常者なのだと悟った女性は弁護士とともに裁判に向けて入念な準備を始めた――。(後編/全2回)
手で顔を覆う女性
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前編のあらすじ】西日本在住の西山あすかさん(仮名・40代)は30代半ばで結婚・出産。2年後に夫に借金が発覚し、離婚した。それから5年後、映画好きが集まるインターネット掲示板で、1つ年下のバツイチ男性と出会い、意気投合。ほどなくして交際に発展し再婚したが、入籍から2カ月後、夫の暴言が始まり、仕事を何の相談もなく辞めてしまう……。西山家の家庭のタブーはいつ、どのように生じたのだろうか。そしてタブーのはびこる家庭という密室から、どのように逃れたのだろうか――。

「お前もお前の親もばか! 親も親なら子も子だな!」

夫(40代)は、再婚相手である西山あすかさん(仮名・40代)に何の相談もなく大工の仕事を辞めた。その後も無職のままで、再就職探しもしていない。仕事をしないだけでなく、どこかに出かける気配もない。フルタイムで働き家計を支える西山さんは、夫は毎日何をしているのか気になったため、聞くと「放っとけ!」と怒鳴られ、暴言を浴びせられた。

西山さんは、中学生になった自分の連れ子(13歳)である息子が夏休みに入ったタイミングで聞いたところ、「何もしてない、部屋に閉じこもっている」と言っていた。

夫は、息子の中学校の入学式には渋々参加したが、「コロナ禍の入学式なのに、換気が悪い! なっていない!」と教員に文句を言い、父兄の態度が悪いと悪態をついた。運動会を見に行けば、「暑い。面倒くさい。もう帰る」と言い出し、文化祭のときは、「つまらない。しょうもない」とブツブツ。西山さんは、一人息子の活躍を落ち着いて楽しめなかった。

結婚して約2カ月後に始まった夫の暴言は、最初は2カ月に一度ほどの頻度だった。西山さんが仕事から帰ってくるのが遅かったり、西山さんが実家に帰っていたりした後だったが、そのうち1カ月に一度になり、その間隔が狭くなっていき、結婚2年目には1週間に何度も罵声を浴びせられるようになっていた。

「気持ち悪い話ですが、今思うと夫は、私が仕事を頑張ったり、私の実家に行って自分(夫)を一人ぼっちにさせたりしたことが気に入らなかったんです。かまってもらえないのをねていたんです」

西山さんは、仕事や実家から帰るとすぐに夕食の支度をしたが、遅くなると夫が先に始めていた。慌てて手伝おうとすると、食材の切り方、火加減、レシピの選び方、食器の選び方、盛り付けなどを細かくチェックされ、「真剣に、プロのように気合を入れて、心を込めて作れ!」と言われる。

その際、ちょっとしたミスでもしようものなら、「仕事ばかりして家庭をかえりみない最低な女だな。仕事を減らせ!」「家にいろ! 子どもの面倒を見ろ!」「本当にばかだな! お前の親もばか! 親も親なら子も子だな!」と怒鳴られる。西山さんが耐えられなくなり、「やめて! 大声出さないで!」と泣いて夫の腕をつかむと、「痛! これDVだからな! 警察呼ぶぞ!」と脅された。

「自分は働かなくなってしまって、私が仕事を減らしたり辞めたりしたら、家計が成り立たなくなるのに、仕事を減らせとか家にいろとか言う意味がわかりませんし、自分が精神的DVをしているくせに、どの口が言うの? といつも思っていました」