次のアメリカ大統領は誰になるのか。ジャーナリストの池上彰さんは「トランプ前大統領は出馬への意欲をちらつかせているが、同じ共和党のライバルとして登場したデサンティス・フロリダ州知事の人気がどんどん高まっている。トランプ氏は焦っているようだ」という。増田ユリヤさんが聞いた――(連載第12回)。
2022年7月26日、米国ワシントンD.C.で開催されたアメリカ・ファースト政策研究所の「アメリカ・ファースト・アジェンダ・サミット」で演説するドナルド・トランプ前米国大統領
写真=EPA/時事通信フォト
2022年7月26日、米国ワシントンD.C.で開催されたアメリカ・ファースト政策研究所の「アメリカ・ファースト・アジェンダ・サミット」で演説するドナルド・トランプ前米国大統領

トランプの出馬はほぼ決定的

【池上】8月8日、トランプ前大統領の自宅がFBIの家宅捜索を受けた、と報じられました。フロリダの自宅であるマール・アラーゴに、政府の公文書を持ち出したのではないかという疑惑に対する捜査です。

大統領経験者が、公文書の持ち出しで起訴されるなどということになれば、これは前代未聞の事態です。2024年の大統領選に出馬するか否かに注目が集まる一方、共和党内の強力なライバルであるフロリダ州知事のロン・デサンティス氏の人気上昇もあり、トランプ前大統の今後が注目されます。

トランプ前大統領は、2024年に行われる大統領選挙出馬への意欲をちらつかせながら、しかし明言は避けてきました。7月14日に公開された『ニューヨークマガジン』のインタビューでは、「(出馬するか否かを)中間選挙前に発表するか、後にするか迷っている」という言い方をしています。この発言を見る以上、出馬はほぼ決定的でしょう。

共和党としては、トランプが出馬宣言をするとすべての話題を持っていかれ、献金もトランプ前大統に集中してしまうので、「せめて中間選挙後にしてほしい」と祈るような気持ちでいることでしょう。

ライバルの人気の高まりに焦るトランプ

【池上】ニューヨーク・タイムズとシエナ大学が実施した世論調査によれば、共和党予備選で投票する意向を示している有権者のうち実に49%がトランプ前大統を支持し、25%のデサンティス知事が続いています。2桁の支持率を得たのはトランプ前大統とデサンティス氏のみ。トランプ政権の副大統領を務めたマイク・ペンス氏は6%にとどまっています。

こう見ると圧倒的にトランプ前大統の方が強いように思えますが、トランプ前大統領自身としてはデサンティス知事の人気がどんどん高まってきているので、焦りを感じていることも確かでしょう。

2015年のイーロン・マスク
2015年のイーロン・マスク(写真=Steve Jurvetson/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

デサンティス知事は、この4月だけで1.6億ドル(160億円)もの政治献金を集めたと言われています。確かに11月の中間選挙でまた州知事選挙に出るにしてもそれほどの献金がいるのかどうか。しかも各州の共和党候補の応援にも駆け回っており、これが大統領選出馬の地ならしとして、全国的に顔を売って歩いているのではないかとみられているのです。

【増田】デサンティス知事は下院議員を三期務めた後、知事に就任した43歳。トランプ前大統領とは二回り以上も下の世代です。

【池上】そのため、トランプ支持を表明していた米電気自動車大手テスラの創業者であるイーロン・マスクが、「トランプからデサンティス支持に乗り換えた」と発言したことも話題になりました。2024年にまたバイデン・82歳VSトランプ・78歳という高齢者対決になるくらいなら、若いデサンティスを対決させた方がいい、と判断したようです。