「4年後を狙おう」と不出馬にして失敗した人も
【池上】アメリカは州知事クラスが大統領選に出るケースがかなり多いんですよね。ロナルド・レーガンはカリフォルニア州知事。ジミー・カーターはジョージア州知事。ジョージ・ブッシュはテキサス州知事。ビル・クリントン大統領もアーカンソー州知事でした。これまでの大統領選候補者には上院議員経験者も少なくありませんが、どうもアメリカではあまり長く上院議員をやっていると「ワシントンの悪弊が染み込んでいるのでは」と疑われて、マイナス評価になってしまうようです。
アメリカの有権者は全く新しい人、しがらみのない人、あるいは州知事経験者を評価する傾向があるので、トランプ前大統領とデサンティス知事、あるいはバイデン大統領とニューサム知事が競る可能性は十分、考えられます。
「デサンティスも、ニューサムも、まだ若いから次の大統領選でもいいのでは」と思われるかもしれませんが、大統領選出馬のチャンスというのはそう簡単にめぐってくるものではありません。
オバマが大統領候補になった2008年の大統領選の際に注目されたニュージャージー州のクリス・クリスティ知事は、「今回はオバマが強いから、4年後を狙おう」と言っている間にスキャンダルが出て失脚してしまいました。しかもそのスキャンダルの内容が、政敵への報復として、ニュージャージー州とニューヨーク州を結ぶジョージ・ワシントン・ブリッジの一部車線を閉鎖し、意図的に大渋滞を起こした、という実に些末なもの。失墜後、2015年に一度出馬表明をしたものの撤回し、トランプ支持を表明することになってしまいました。
現在の支持率は拮抗
【増田】現在、民主党と共和党の支持率は拮抗しています。あくまでも中間選挙に関する世論調査ですが、ウォール・ストリート・ジャーナルが8月17日から25日まで行った世論調査では、民主党支持が47%、共和党支持が44%でした。確かに、他の記事などを見ても「共和党優勢」と報じているものはあまりありません。
【池上】それはさすがに、今年6月に米連邦最高裁が「中絶は女性の権利」としてきた49年前の判断を覆したことが大きかったのでしょう。保守派判事が増えたことによる判断でしたが、中絶の賛否以前に、決めるのはそれぞれの州であるべきだ、という反発も大きく、「最高裁判所までもが民主党と共和党の争いに巻き込まれたのか」と感じ、失望した米国民が多かったようです。
こうした分断が中間選挙、そして大統領選にどう影響するか、注目です。