なぜ日本の政治家は「宗教団体」に頼るのか
【池上彰】旧統一教会(現在の世界平和統一家庭連合)に注目が集まり、信者への多額の献金やいわゆる霊感商法が問題となっているだけでなく、政治とのかかわりに疑問の声が上がっています。特に選挙時に教団や教団関係者がボランティアスタッフを派遣するなどの協力関係があったことがクローズアップされ、その実態が報じられています。
【増田ユリヤ】私は海外の選挙事情を各国で取材しますが、学生を含め多くの人が自発的に選挙スタッフに加わっていて、「人手集めで苦労している」という話はあまり聞いたことがありません。選挙運動自体も日本とは違ってかなり自由に行われており、たとえば交差点の角に旗を立てたテーブルを置き、候補者と地域の有権者がいろいろと話したり、グッズを配ってアピールしたりというのが選挙の風景です。日曜日に公園に集まって、都市の中心部までデモ行進を行うこともありますが、日本のように選挙カーで名前を連呼するような騒がしいものではありません。
共産党や創価学会を恐れて、戸別訪問は禁止になった
【池上】日本の選挙運動は候補者による住宅への戸別訪問が禁止されたために、仕方なく自分の名前を選挙カーで連呼して覚えてもらうしかなくなったんです。戸別訪問が禁止されているのは、それぞれの屋内で金銭のやり取りによる票の買収が行われても確認できないことが理由でした。また、共産党や創価学会など、熱心に選挙活動をしてくれる組織を持つ政党が人海戦術で戸別訪問を行えば、選挙に勝ってしまうのではないか、という自民党の危惧もあったようです。
【増田】戸別訪問が禁止されたとしても、やはり選挙には人手が必要ですよね。
【池上】例えば選挙期間中に配るビラには、選挙管理委員会が発行している「頒布シール」を手作業で貼らなければなりません。貼っていないビラを配布すれば、選挙違反になります。何千枚ものシールを貼る人手をボランティアで集めるのは、そう簡単ではありません。
【増田】一般市民のボランティアが集まらないとなれば、候補者にとってはまとまった人数の人手を派遣してくれる組織との付き合いが選挙の趨勢を左右しかねない、ということになってしまいます。