「ボランティア人員の派遣」はモラルとして許されるのか

【増田】旧統一教会は政治に接近して、教義を国教にしようとか、自分たちだけを他の宗教よりも優遇してもらいたい、と考えていたのかどうか。

現在のところ、政教分離の観点から違反を問える事例は出てきていません。信者や教団には信教の自由が憲法で保障されていますし、政治活動の自由もあります。旧統一教会の信者が政治活動を行うこと自体は、憲法の範囲内である限り、何の問題もありません。

一方で残るのはモラルの問題で、霊感商法や献金で消費者被害を出している団体の支援を国民や有権者の代表である議員が受けるのは、たとえボランティア人員の派遣だったとしても、モラルとしていかがなものか、という点が問われているのです。

旧統一教会
写真=iStock.com/Koshiro Kiyota
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一部の人を不幸にさせたことは間違いない

【池上】本来、国会議員は国民の代表として、国民全体の幸福を考えなければなりません。しかし旧統一教会は、過去には霊感商法について民事裁判で負けるなど、一部の人を不幸にさせたことは間違いない。そうした団体から支援を受けていていいのか、という点が問われています。

【増田】国民の政治参加という点からも、この問題は問われますね。安倍元総理など自民党の一部の政治家が統一教会票を取りまとめたという報道もありますが、市民が政治に参加し、選挙の手伝いはもちろん、投票に行けば、相対的に組織の力は小さくなります。

【池上】そういうことですね。「自分にとっての理想的な政治を実現してほしい。だから自分はこの政治家を応援し、選挙を手伝い、投票する」と言う人が増えれば、モラルが問われる団体に支援してもらう必要はなくなります。政教分離や政治家側の姿勢だけでなく、国民の政治参加意識も問われています。

(構成=梶原麻衣子)
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