国際社会で日本の存在感を高めるには、どうすればいいのか。ジャーナリストの池上彰さんは「アメリカ一辺倒ではなく、日本ならではの外交を展開すべきだ。日米同盟を基本に、隣国の韓国や南半球の『雄』とも言えるオーストラリア、外交巧者であるイギリスと仲良くしたほうがいい」という――。
※本稿は、池上彰『新・世界から戦争がなくならない本当の理由』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。
パレスチナ紛争で「日本ならではの外交」を
日本の外交は、やはりアメリカとの同盟関係を基軸にすることが大原則です。しかし、すべてアメリカと同一歩調を取る必要はないと思います。
たとえば地球温暖化問題で、アメリカはトランプ政権時代に、国際的な枠組み「パリ協定」から離脱しました(2020年11月)。バイデン政権になってから復帰しましたが、もしトランプが再選されれば、再び離脱することが予想されます。そのとき、日本が「温暖化対策は必要です」と進言する。これが大事です。
パレスチナの紛争で言えば、アメリカは完全にイスラエル寄りですが、日本はイスラエルとの関係を大事にしながらも、パレスチナも支援しています。独自の外交でいいでしょう。幸いにも、日本はパレスチナともイスラエルとも良好な関係を築いています。日本ならではの外交を展開できるはずです。
日本の支援資金で危機を乗り越えた国連組織
アメリカはUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)への支援をトランプ政権時代にやめています。なぜパレスチナを守る必要があるのか、アメリカの支援金の一部がハマスに渡っているに違いないと、支援をいっさい停止したのです。
UNRWAの支援資金は3割をアメリカが負担していましたから、それがなくなり、UNRWAは機能停止になりかけました。すると日本とEUがアメリカの抜けた分を埋め、UNRWAは危機を乗り越えることができました(バイデン政権はUNRWAへの支援を復活させています)。
ただし、ハマスがイスラエルを攻撃した際、UNRWAの職員がハマスの手助けをした疑いが出て、2024年1月に世界各国は一時、UNRWAへの支援を停止しました。