日本の「対中国ノウハウ」が役に立つ
また、新型コロナウイルスが中国の武漢で発見されたとき、オーストラリアのスコット・モリソン首相は「ウイルスがどこで発生したか厳重に調べなければいけない」と発言したのですが、そのとたん、中国はオーストラリアからの石炭の輸入をストップしました。このことで、オーストラリアは「中国はほんの少し刺激するだけで貿易に大きな影響を与える危険な国だ」ということを認識したのです。
2017年には、中国寄りの発言を繰り返していたオーストラリアの野党・労働党のサム・ダスチャリ上院議員に、中国が莫大な資金援助をしていたことも判明しています。
日本には尖閣諸島問題をはじめ、中国との関係で蓄積された外交ノウハウがありますから、親日国・オーストラリアを支えることができるのではないでしょうか。北半球にある日本が、南半球の「雄」とも言えるオーストラリアと仲良くすることは地政学的にも有効だと思います。
イギリスのTPP加盟は日本のおかげ
最後のイギリスは大英帝国時代から外交巧者で、あらゆるインテリジェンスを豊富に持っています。日露戦争で日本がロシアのバルチック艦隊を破ったのは日英同盟下、イギリスからの情報が元になっていました。
なお、日露戦争は日本が勝利したことになっていますが、日本は8万4000人の戦死者を出し、およそ20億円(いまの約3兆円)の戦費の多くを外債(外国からの借金)で賄いました。国家予算の5年分です。これでは国家も国民も疲弊します。そのような状態にあった日本が、アメリカのセオドア・ルーズベルト大統領による仲介案に乗り、ロシアと平和条約(ポーツマス条約)を結んだのです。
イギリスは、EUを離脱(2020年2月1日)したことで、経済的な苦境に陥りました。そのため、2021年にTPP(環太平洋経済連携協定)への加盟を申請します。TPPの加盟国間では関税がなくなり、貿易・経済が活性化するからです。
イギリスの加盟申請に対して、日本は継続して後押ししてきました。そして2023年7月16日に開かれたTPP閣僚会合で、ついにイギリスの正式加盟が承認されます。この会合には、日本から後藤茂之経済財政再生担当大臣が出席していました。日本がイギリスに恩を売った形になったと思います。
ロシア・ウクライナ戦争でも、イギリスは陰に陽にインテリジェンス機能を発揮しています。このイギリスと関係を深めることは、日本にとってきわめて有益です。まさに現代版・日英同盟です。