ロシア・ウクライナ戦争はいつ終わるのか。ジャーナリストの池上彰さんは「ウクライナはアメリカの軍事支援に頼っている。今年のアメリカ大統領選でトランプ氏が再選すれば、こうした支援を打ち切る可能性があり、プーチン大統領が漁夫の利を得るだろう」という――。

※本稿は、池上彰『新・世界から戦争がなくならない本当の理由』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

ウラジーミル・プーチンとドナルド・トランプ
写真=SPUTNIK/時事通信フォト
2019年6月28日、大阪で開催された20カ国・地域(G20)首脳会議での二国間会談中に握手するロシアのウラジーミル・プーチン大統領とドナルド・トランプ米国大統領(当時)

アメリカの戦略はウクライナを“負けさせない”

ロシア・ウクライナ戦争に対する、世界各国の関わり方を見てみましょう。

まずアメリカです。結論を先に言えば、アメリカの戦略は「代理戦争」です。ウクライナに米軍は派遣しないけれども、兵器は供与する。その兵器で戦ってくれということです。

しかし、それには条件があります。ロシア中心部まで攻撃できるような兵器――長距離射程ミサイルや長距離を飛べる戦闘機などは除くことです。そのような兵器をウクライナに渡せば、ウクライナがモスクワを攻撃するかもしれない。するとロシアが報復で核兵器を使う可能性がある。そう考えたアメリカは、ロシアには核兵器を使わせない、ウクライナが自国を守れるギリギリのレベルでの兵器を供与したわけです。

つまり、アメリカは積極的にウクライナを勝たせようとしているわけではありません。ウクライナを“負けさせない”程度の支援しかしていないのです。ウクライナに兵器を送って代理戦争をさせ、ロシアの力を弱める。ロシアがこれ以上、周辺国を侵略できないように脅威を取り除く。これがアメリカの戦略です。

はるか遠くの戦争で大儲けする軍需企業

アメリカの軍事支援によってロシア軍は大打撃を受けました。ウクライナもロシア軍の攻撃で多くの民間人が犠牲になっていますが、アメリカにしてみれば、その犠牲はロシアを痛めつける代償なのです。

アメリカがウクライナに大量の兵器を供与するということは、アメリカ政府が軍需産業から買い上げることですから、いま、アメリカの軍需産業が有卦うけっています。大儲けしているのです。

実際、2022年の夏頃から、軍需企業の株価が上昇しています。世界最大の軍需企業ロッキード・マーチンは2022年12月、496ドルの史上最高値を記録しました。ウクライナ軍が使った携行型対戦車ミサイル「ジャベリン」は、同社とレイセオン・テクノロジーズが共同開発した兵器で、ロシア軍の戦車を1000両以上も破壊したとされています。レイセオンはロッキードに次ぐ世界第2位の軍需企業で、こちらも株価が上昇しました。戦場で多くの人たちが命を失う一方、大儲けする企業がある。悲しい現実です。