11月のアメリカ大統領選に向けた共和党の指名候補争いで、トランプ前大統領が予備選で連勝し、共和党の指名候補となることがほぼ確実となった。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「トランプ氏の言動は予測不可能で、世界経済にとって大きなリスクとなる恐れがある」という――。
米大統領選で返り咲きを目指すトランプ前大統領(2024年1月19日、ニューハンプシャー州コンコード)
写真=AFP/時事通信フォト
米大統領選で返り咲きを目指すトランプ前大統領(2024年1月19日、ニューハンプシャー州コンコード)

トランプ氏「連勝」で独走態勢

1月16日にアイオワ州で開かれた共和党の党員集会で、ドナルド・トランプ前大統領が、次期大統領選の指名候補をめぐる投票で圧勝した。世論調査などから“トランプ優勢”の見方は強かったが、予備選の皮切りとなるアイオワで下馬評を裏づけた意味は大きい。さらに、23日に行われた第2戦、ニューハンプシャー州の予備選挙でもトランプ氏が勝利し、一段と優位な状況になっている。

共和党の指名候補は、7月15日~18日の党大会で正式に決まる。1月から各州で順次実施される党員集会と予備選では、党大会に出席する「代議員」が選ばれ、代議員の獲得数が最も多い候補が正式指名を受けることになる。

アイオワでトランプ氏が獲得した代議員は51.0%に当たる20人で、2位のロン・デサンティス氏(9人)、3位のニッキー・ヘイリー氏(8人)、4位のビベック・ラマスワミ氏(3人)に大差をつけた。2位のデサンティス氏と4位のラマスワミ氏はすでに選挙戦からの撤退を表明し、今後はトランプ氏とヘイリー氏の一騎打ちとなる。

民主党側は、バイデン大統領に健康問題などがなければ、2期目を狙うことになる。11月5日投票の本選が、前回(2020年)同様にバイデンvs.トランプとなれば、バイデン政権の支持率低迷から見て、トランプ再選が現実のものとなるという予想は多い。

テーマは「復讐(revenge)と報復(retribution)」

アイオワの勝利から、米メディアでは「トランプ2.0」への関心が高まっている。トランプ氏が再選後に取り組むと予想される政策の中身だ。

ここでは「もし第2期トランプ政権が誕生したら世界はどうなるか」をシミュレーションしたい。

第2期トランプ政権のテーマが「復讐(revenge)と報復(retribution)」であることは間違いない。彼自身が「支持者は報復を期待している」と発言し、「TRUMP RETRIBUTION 2024」と書かれたプレートはAmazonでも販売されている(※写真)。支持者ウケを狙っている面と、トランプ氏の「復讐したい」という本音の両面があると見ていい。

Amazonで販売されている「trump RETRIBUTION 2024」と書かれたプレート
Amazonで販売されている「TRUMP RETRIBUTION 2024」と書かれたプレート(Amazonのウェブサイトより)

ただ、1月10日にアイオワ州で開かれたタウンホールイベントでは、FOXニュースの司会者から質問されて「報復している暇はない」とやんわり否定した。トランプ氏は、実業家だけあって状況に応じて発言を微調整する柔軟性やバランス感覚はある。

昨年12月5日に開かれた同様のイベントでは、司会者から「誰かに報復するために権力を乱用しないと国民に約束できますか?」と問われ、「初日を除けば約束できる」とトランプ氏は答えた。初日にメキシコとの国境を封鎖し、石油掘削を拡大すると語ったので、かなり強権的に政治を進めることが予想されている。