セブン&アイ・ホールディングスが、イトーヨーカ堂などのスーパー事業について上場を検討すると発表し、注目を集めている。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「セブン&アイは、スーパー事業を切り離すのではなく、再生に向けて戦略的かつ長期的な計画をもっているのだろう。特に創業家の動きに、その強い意欲がうかがえる」という――。
イトーヨーカドー大森店
撮影=プレジデントオンライン編集部
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セブン&アイがイトーヨーカ堂の「上場検討」

セブン&アイHD(ホールディングス)は4月10日に開いた決算発表の会見で、イトーヨーカ堂をはじめとするスーパー事業のIPO(新規株式公開)を検討すると発表した。株式上場は2027年以降の見通しだという。

会見の前日、セブン&アイがヨーカ堂の株式を一部売却すると報道された。業績不振が続くヨーカ堂の構造改革を進め、外部資本を入れて再成長を目指すという内容だった。

ヨーカ堂は21年2月期から4期連続の最終赤字となっている。23年にセブン&アイは、アクティビスト(もの言う株主)からスーパー事業の売却や分離を求められた。4月10日の会見でセブン&アイの井阪隆一社長は前日の報道に触れ、ヨーカ堂株の一部売却を検討すると取締役会で決議した事実はない、と強調した。

IPOが実現すれば、セブン&アイHDは持ち分の一部を手放すことになる。しかし「一部売却」は、ヨーカ堂をセブン&アイから切り離すというイメージが想起されるので、井阪社長が報道を否定したのは、あくまでもグループ内にとどめながら事業再生を図る、という狙いからだろう。

ヨーカ堂・山本社長が語った「IPOの意義」

この会見で、イトーヨーカ堂の山本哲也社長は、同社のIPOについて次のように語っている。

抜本的な変革をやり遂げることが最低条件。達成したあとにどう再成長するかを考えなければならない。スーパーストアとして必要な投資の方向性を決めてやらないと競合には勝てない。自らの資本で、自ら投資ができるようになることが(IPOの)最大の意義。去年までは構造改革に注力してきた。これを原資にして体質改善するための投資をしないといけない。

セブン&アイは昨年3月、25年度にスーパー事業のEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)が850億円、EBITDAマージン(EBITDA/営業収益)が6%程度などの目標を掲げている。かなりハードルは高く、発表のタイミングからアクティビスト対策だと受け取る人もいた。

しかし筆者は、セブン&アイには戦略的かつ長期的な計画があると見ている。業界の現状も含めて説明していこう。