ウクライナ戦争は「24時間以内に終わらせる」
いくつか重要な項目を解説しよう。
まず反ESG投資には、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)にかかわる多くの問題が含まれている。例えば、トランプ氏は「気候変動問題はフェイクニュースだ」と主張してきたので、脱炭素社会をめざす「パリ協定」から再び離脱し、石油ガスの採掘を促進すると予想される。
2020年の大統領選で、トランプ氏はポリティカル・コレクトネス(政治的に適切な発言や政策の推奨)に対抗する「反ポリコレ」を掲げていた。今回は「反WOKE」が加わると予想されている。WOKEは「リベラルに目覚めた人」の意味で、否定的には「意識が高いことを気取って他人に価値観を押しつける人」というニュアンスで用いられる。
ウクライナ戦争については、戦闘停止と和平実現に向けて積極的に動くと予想されている。トランプ氏が昨年「私が大統領なら24時間以内に終わらせる」と発言したのは、ウクライナへの支援を取りやめるという意味だ。早期の戦闘停止が実現するには、ウクライナが領土の一部をロシアに明け渡すことになる。
ウクライナのゼレンスキー大統領にとって、アメリカ大統領に最もなってほしくないのはトランプ氏だろう。この1月に再選の可能性が高まったせいか、ゼレンスキー大統領はトランプ氏に「キーウに招待します」と呼びかけている。
さらに、アメリカがNATO(北大西洋条約機構)から脱退することも懸念されている。いまアメリカが脱退すれば、ヨーロッパのパワーバランスが崩れ、大きなリスクになりかねない。昨年12月、アメリカ議会では、大統領令だけではNATO脱退ができないように法律が整備された。民主党と共和党の上院議員が共同提案した超党派の政策で、トランプ氏によるNATO脱退を防ぐ準備が進められたことになる。
「最大のリスク」は中東問題
第2期トランプ政権が誕生すると、最もリスクが高まるのは中東だと筆者は見ている。パレスチナ自治区ガザ地区でイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が激化するなか、イスラエルを支援するアメリカは、現在も国際社会で非難されている。さらに、アメリカ国内では民主党の支持者に分断が起きている。リベラルな支持者は基本的に人権重視、多様性重視だから、ガザ地区で民間人の被害が拡大していることを許容しがたいからだ。
親イスラエルの共和党は、予備選で候補者がディベートする際も、主要候補者はイスラエルへの忠誠心を競い合っている。今回の予備選で、候補者たちの親イスラエルがより明確になったといえる。
よく知られるように、アメリカでは金融、石油、メディア、エンターテインメントなどの主要産業はユダヤ系資本が支えている。イスラエルの支援を受けてロビー活動する“イスラエルロビー”は非常に強力で、大統領選への影響力は大きい。候補者がイスラエルへの忠誠心をアピールするのは無理もない。
なかでもトランプ氏の親イスラエルが別格なのは、筆者が過去の記事にも書いたように、ユダヤ人(ユダヤ教徒)が親族に多いという背景がある。