米ギャラップの調査によると、仕事への熱意や職場への愛着を示す「エンゲージメント率」が、日本は145カ国中最下位の5%で、4年連続で世界最低水準となっている。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「エンゲージメント率の低い職場は、生産性も低い傾向にあることがわかっている。日本人は働き方の姿勢を根本的にあらためる必要があるのではないか」という――。
東京駅の駅前の横断歩道を渡る人々
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なぜ柳井社長は賃金を最大40%アップしたのか

2022年の1人当たり名目GDPランキングで、日本は32位となった。前年の27位からは5ランクダウンし、主要7カ国(G7)では最下位だ。名目GDPで世界第3位をキープしているものの、1位のアメリカ、2位の中国に大きく差をつけられ、4位のドイツに追い越されそうな状況だ(IMF調べ)。

日本の国際競争力は、低下の一途をたどっているように見える。もちろん個々の企業に目を向ければ、世界水準の競争力を意識する経営者はいる。例えば、ファーストリテイリングは昨年、国内で正社員の賃金を最大40%ほど引き上げると発表した。柳井正会長兼社長は「海外の人はハードに仕事をしており、日本は生産性が低いことを自覚する必要がある」と発言した。

この報酬制度について、同社は「成長意欲と能力ある従業員一人ひとりにフェアに報い、企業としての世界水準での競争力と成長力を強化するため」と説明する。

日本の「労働生産性」はG7で最下位

日本の国際競争力が低下した原因はいくつも考えられる。なかでも見逃せないのは、よく言われる生産性の低さだ。シンクタンク「日本生産性本部」の調べでは、日本の一人当たり労働生産性(就業者一人当たり付加価値)は、2022年のデータでOECD加盟38カ国中の31位だった。G7で最下位であり、1970年以降で最低の順位だ。

国際比較で指摘される日本の弱みはもうひとつある。「社員エンゲージメント」だ。米ギャラップ社が発表した2023年版リポートでは、日本は145カ国中で最下位だった。仕事や会社への熱意、貢献意欲などが高い「エンゲージしている社員」はわずか5%で、4年連続で過去最低となっている。

【図表1】日本人の「仕事への熱意」は145カ国最下位の5%(2022年)
出典=米ギャラップ「State of the Global Workplace 2023 Report

なぜ、日本人の生産性やエンゲージメントは低いのか。筆者は、会社が“個人の強み”を活かせないことが大きな原因の1つだと見ている。個人の強みを活かせれば、社員一人ひとりのパフォーマンスは高まり、結果として会社の業績が伸びる。日本の競争力も強まるという好循環が生まれてくるはずだ。