戦争が長期化したほうが中国にとって好都合
中国にしてみれば、ロシアが中国に頼らざるを得ないような、いまの状況は好都合です。ロシアがウクライナとの戦争に負ければ、“中国頼り”にいま以上の負荷がかかるかもしれないので困りますが、勝つと増長するのでこれも困ります。戦争が長期化して膠着状態が続くほうが、台湾有事のシミュレーションとして分析できます。だから静観を決め込んでいるのです。
またイスラエルとハマスの戦いにおいても、中国は様子見をしながら将来的な展望を計算しています。中国は、どちらかと言えばパレスチナ(ここではガザとヨルダン川西岸のパレスチナ自治区を指します)寄りです。
グローバル・サウスの国々も、同じようにパレスチナに同情的です。ハマスの武力行使は許せないけれども、そのためにイスラエルの報復攻撃を受け、パレスチナの民間人が犠牲になっている。「なんてかわいそうなことをしているのだ」と、イスラエルを非難するアメリカの若者たちに通じる心理があります。
中国はパレスチナ側に寄り添うことによって、グローバル・サウスを味方につけることができます。これは将来、台湾との関係においても中国のメリットになるでしょう。
中国が静観しているのには狙いがある
戦争は当事国以外にも利益・不利益をもたらします。たとえば日本は、朝鮮戦争のときに、国連軍(実態はアメリカ軍主体)が必要とする物資を製造・供給することで経済的に大きな利益を得ました。いわゆる「朝鮮特需」です。
今回のロシア・ウクライナ戦争では、インドと北朝鮮が戦争特需を得ています。インドはロシアの足元を見るように大量の石油を買い叩きましたし、北朝鮮は砲弾をロシアに売って儲けています。
中国は経済的な利益のみならず、世界的なプレゼンス(存在感)を高める意味でも、長期的な展望の下に戦争の行方を見守っているのです。