いま広く食べられている「おいしいチョコレート」は150年前のスイスで生まれている。2つのスイス企業の大発明が、チョコレート業界を一変させた。ジャーナリストの増田ユリヤさんの著書『チョコレートで読み解く世界史』(ポプラ新書)より、一部を紹介する――。
チョコレート
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ミルクチョコを開発した酪農大国スイス

突然ですが、ビターチョコとミルクチョコ、どちらがお好きですか? 最近では、カカオ分が70%以上のものが健康にいい、などとも言われていますが、口溶けがよくまろやかな味のミルクチョコレートは、やはり人気がありますよね。

ミルクチョコレートを開発したのは、酪農大国スイスです。スイスでも、19世紀のはじめには、ジュネーブにほど近いレマン湖のほとりにココア製造工場ができ、カカオ豆の加工技術の開発と機械の改良が進んでいました。

固形のチョコレート作りも行われるようになっていましたが、カカオ豆の種類によっては苦味が強く、固形にするとごまかしがきかなかったので、苦味や渋みなどをどう克服するかということが課題になっていました。それを解決したのが、ダニエル・ペーターとアンリ・ネスレです。ペーターの家業はろうそく製造、アンリ・ネスレは薬剤師で、近所に暮らす友人同士でした。

コンデンスミルクとカカオが高相性

ネスレは研究熱心で、スイスの名産品である牛乳を加工することで、母乳の代替となる乳児用粉ミルクの開発に成功しました。ペーターはフランスのカカオ工場で働いた経験があり、ろうそくを作るかたわら、チョコレートの試作にも取り組んでいました。

美味しいチョコレート作りの一助となるのではないかと、ネスレはペーターに自身の粉ミルクを加えることを提案しました。ペーターもそれに応じましたが、粉ミルクだと口当たりが悪く、そもそものチョコレートの食感もザラつきがあったのでうまくいきませんでした。しかし、同じミルクでも、ネスレのライバル社が出しているコンデンスミルクを試しに加えると、なめらかな仕上がりになりました。コンデンスミルクはとろみのある液体ですから、粉よりもカカオになじみ、うまく混ざったのです。

ここにミルクチョコレートの原型が誕生しました。1876年のことです。そして、ネスレもコンデンスミルクを作ることにしたのです。ネスレは、今や世界規模の食品メーカーに成長したことは、皆さんも知るところですよね。

ネスレのオフィス
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