ハンバーガーチェーン「バーガーキング」が好調だ。2019年には大量閉店が話題になったが、運営元が変わって反転。売上高は3年連続で前年比130%超を記録し、店舗数は約3年で倍増している。背景にはなにがあるのか。経営コンサルタントの関谷信之さんが解説する――。
「すかいらーくグループ ゆめあん食堂 大森山王店」の跡地に入ったバーガーキング
筆者撮影
「すかいらーくグループ ゆめあん食堂 大森山王店」の跡地に入ったバーガーキング

日本マクドナルド創業者・藤田田の「宣言文」

29年前の12月、マクドナルドの全社員に向けて、「宣言文」が公開された。以下のタイトルが記されている。

「巨大宇宙戦艦マクドナルド号出撃宣言」

冗談ではない。文を書いたマクドナルド社長(当時)藤田田ふじたでん氏は大まじめだ。内容を要約すると、

「この先10年以上続くデフレに対応すべく、『価格破壊』すなわち大幅値下げを敢行する」

というもの。マクドナルドは、デフレの進行に合わせ「宣言」を忠実に実行していく。

400円のバリューセット、130円――いや平日は65円――のハンバーガー。

「価格破壊砲」に直撃されたバーガーキングは撃沈、かすめたロッテリアは大破、価格競争に参戦しなかったモスバーガーが漁夫の利を得る。以降、圧倒的なシェアを獲得したマクドナルドが盤石になり、2位にモスバーガー、3位にロッテリアという業界構造が、現在まで続いている。

日本を撤退したバーガーキングは、2007年に再上陸するも、上位3社の牙城が崩せない。19年には23店の大量閉店を実施している。全体のおよそ2割、1カ月で12店というスピード閉鎖に、

「また撤退か」

という憶測が広がる。しかし、この「大量閉店」こそ、バーガーキング逆襲の始まりだった。

4年半で2.7倍に急増、売上は前年比130%超

当時、バーガーキングの運営は2社が混在していた。ひとつは、フランチャイズ契約が終了していた「バーガーキングジャパン」。もうひとつは、17年にフランチャイズ契約を締結した「ビーケージャパンホールディングス」である。

大量閉店の対象は、前者「バーガーキングジャパン」運営店舗だ。「ビーケージャパンホールディングス」は、古い運営店舗を一掃し、新たなプロモーション戦略のもと、新店舗を毎年30店のペースで出店していく。

19年時点で76店まで減少していた店舗数は、21年には141店、22年には177店、そして、今年度末(23年)には207店へ。4年半で2.7倍に急増したことになる。店舗増に伴い、売上も3年連続で前年比130%超を達成し、今期売上は200億円を見込む。

バーガーキング店舗数推移
画像=ビーケージャパンホールディングス プレスリリースより

売上219億円、業界3位の「ロッテリア」の背中が見えてきた(※)

※売上=21年度実績ロッテリア「フランチャイズ契約の要点と概説」より