「旧統一教会と政教分離」でおさえるべき憲法条項

【増田】また、戸別訪問の禁止だけでなく、日本の悪しき選挙習慣はほかにもかなりありそうです。例えば、選挙期間前後には、候補予定者が「本人」というタスキをかけて、駅前や大通りで辻立ちをしています。事前運動をしてはいけないという公職選挙法が理由ですが、あのタスキを見ると滑稽だなと思ってしまって……(笑)。

【池上】公職選挙法はかなり複雑ですし、電子メールやウェブサイトを使ったインターネット上の選挙活動についても、認められたのは2013年で、「ネット選挙解禁」からまだ10年経っていません。

【増田】旧統一教会の問題は、政教分離という点ではどう考えるべきなのでしょうか。

【池上】政教分離については、憲法第20条、89条で定められています。

第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

つまり、政教分離とは、特定宗教団体に対し、政治が弾圧や抑圧を行うことや、不況のための公金支出、あるいはどこかの宗教団体が政権を取って、自分たちの宗教を国教に指定したり、国民に信じるように強要したりすることを禁じています。

「創価学会と公明党」が問題にならない理由

一方で、宗教団体やその信者、教徒が政治活動を行うことは自由です。例えば現在、連立与党に入っている公明党は、創価学会という宗教団体が作った政党で、支持者も信者が多く、選挙前には組織的に活動してもいます。しかしそうした活動を行い、政治に参加すること自体は政教分離に反しません。ただし、仮に公明党が、創価学会にだけ有利なはからいをしたり、ライバルの宗教団体を抑圧したりするようなことがあれば、これは政教分離に反します。

創価学会は以前、国立戒壇を作ること、つまり日本が国家として富士山の大石寺の前に本堂を作り、日蓮宗を国教として定めることを目標としていました。そのために信者から多額の献金を集めることが必要だったので、かなり激しい集金活動を行ったのです。

しかし公明党が結成された時に、政党の母体が国教を定める運動をしていてはまずいのではないか、政教分離に反するのではないか、と指摘されたことで、創価学会は国立戒壇を断念しました。この国立戒壇の断念を許容できなかった人たちが作ったのが顕正会という宗教団体です。そのため、創価学会と顕正会は同じ日蓮宗系の宗教団体ですが(ただし双方とも日蓮正宗からは破門)、激しく対立しています。