「関係性の点検」に追われ仕事に手が付かない議員たち
旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と自民党議員の関係を巡る問題が一向に収まらない。
「国民の皆様から引き続き懸念や疑念の声を頂いております。自民党総裁として率直におわびを申し上げます」
岸田文雄首相は8月31日に開いた記者会見で、ついに党を代表して頭を下げるところまで追い込まれた。安倍晋三元首相の「国葬」を巡る反対意見もあり、多くのメディアの世論調査で、岸田内閣の支持率が大幅に下落した。参議院議員選挙に大勝し、選挙がない「安定の3年間」を手にしたはずが、一気に足元がぐらついている。
会見で岸田首相は、「党の基本方針として、関係を絶つよう所属国会議員に徹底する」と旧統一教会との「決別」を宣言した。当初は各議員の責任で党は関係ないとしてきたものを、党としての方針を明確にしたわけだ。また、所属国会議員に旧統一協会との「関係性を点検」して公表することも求めた。
そんな指示を受けて、点検に追われている議員が少なからずいる。「急速に進む円安で経済が大変な時だからと思って会ったのですが、旧統一教会の問題で頭がいっぱいだとかで、話をしてもうわの空でした」と旧知の経済閣僚と面会した学者は苦笑する。他にも政務三役や党の役職に就いていて、まったく仕事が手に付かない議員がいるようだ。それほど、自民党議員にとっては突然目の前に現れた大問題になっているのだ。
永田町の常識は世の中の感覚とあまりにかけ離れていた
そもそも、ほとんどの議員が、旧統一教会との関係を「軽く」考えていたのだろう。メディアで関係が明らかになり始めた7月末の議員たちの反応がそれを示している。
「何が問題か、僕はよく分からない」。そう記者会見で発言して、ネット上などで大炎上した福田達夫総務会長(当時)は、ある意味、正直な反応を示したということだろう。
他の議員も含めて、メディアに問題を指摘されても、どこか腑に落ちない表情で受け答えしていた。信教の自由が憲法で保証されている日本で、宗教団体に応援してもらって何が悪いのだ、という思いだっただろう。また、選挙活動を手伝ってくれたり、票集めをしてくれる支援者に頼まれた会合で挨拶してどこが問題なのか、他の支援者と何も変わらないではないか、といった思いもあったのだろう。中には旧統一教会がどんな宗教団体かもまったく知らずに支援を得ていた議員もいたに違いない。
「永田町の常識は世間の非常識」と言うが、その辺りが世の中の感覚とあまりにかけ離れていた。岸田首相をはじめ大半の議員たちがそれに気が付き、大きな問題だと感じ始めたのは、国民の批判の声が収まらず、支持率が低下してからだった。岸田首相が頭を下げるのに2カ月近くを要したのがそれを物語っている。