年明けに開かれたアメリカ経済学会では、金融危機と、各国際通貨について様々なセッションが行われた。識者が各通貨の現状と課題をどのように見ているのか、筆者が、独自の見解も含めて報告する。

今年のアメリカ経済学会のテーマとは

毎年、お正月明けにアメリカの主要都市でアメリカ経済学会の年次総会が開催される。今年は、昨年のアトランタに続いて、ロッキー山脈の麓にあるデンバーで開催された。本来は、厳しい寒さで知られているデンバーではあるが、着いたときは春のように暖かく、東京のほうがずっと寒いとデンバーの気候を甘く見たものの、帰国の日、早朝より激しい雪が降り積もった。ロサンジェルスまでのフライトは、機体に薬剤を吹き付けて、降り積もった雪を溶かしたうえでの出発であった。また、トランジットのロサンジェルスも寒空に下にあった。偏西風が蛇行しているせいか、昨年暮れからのヨーロッパでの大寒波とともに、アメリカにも寒波が襲っていた。それは、まるで金融危機が欧米を襲ったかのようである。

今年のアメリカ経済学会では、2007年から08年にかけて経験した世界金融危機に関連したテーマの下で研究成果が報告されるセッションが多数、見られた。金融危機の発生原因、金融危機の世界伝播、金融危機の下での金融政策などである。とりわけ、金融危機に対応して連邦準備銀行が量的金融緩和第二弾、いわゆるQE2(Quantitative Easing 2)を行い、これまでの金利を政策手段とする伝統的金融政策から非伝統的金融政策への変換、それに伴う連邦準備銀行のバランスシート上の資産サイドの構成要素の大きな変化を含めて、その非伝統的金融政策の効果に関する報告が散見された。また、「金融政策の将来」と題されたセッションにおいては、シカゴ連邦準備銀行や欧州中央銀行とともに日本銀行から西村清彦副総裁が、日本の人口高齢化の下でのバランスシート調整の問題について講演され、高齢化による無形の人的資本の減少が日本経済の成長率を低迷させているという認識の下に、日本銀行の「成長基盤強化を支援するための資金供給」を中心に金融政策運営を説明された。

筆者が最も関心を持っている国際通貨体制に関しても、いくつかのセッションが設けられていた。なかでも、「ドル、ユーロ、元と国際通貨制度」や「ユーロは生き残れるか?」というテーマの付けられたセッションでは、大変興味深い報告と議論が行われた。