ユーロが生き残るための方策はあるのか

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最後に、ユーロはどうだろうか?

「ユーロは生き残れるか?」というテーマのセッションでは、09年に始まったギリシャ財政危機、そして、10年に起こったアイルランド金融危機の影響を受けたユーロの混乱から、「ユーロは生き残れるか?」という問いに報告者が答える形で進められた。結論から言うと、すべての報告者が「YES!」と答える、楽観的な見方が披露されていた。

前述した国際通貨体制との関連においては、ユーロは、国際通貨体制の多様化のために有用であるという見解が示され、ドルに次ぐ第二の基軸通貨として依然として期待されている。また、ユーロの崩壊の可能性は5%にすぎないが、もしユーロが崩壊すれば、国際通貨体制それ自体も崩壊するという見解も示されていた。さらには、GIPS(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン)がユーロ圏に留まることによってユーロ崩壊が克服される。そして、長期的には国際競争力を高めるために経済の構造改革が必要とされるとともに、短期的には危機国の債務リストラ(債務負担を額面から減額するという、いわゆるヘアカット)の必要性を説く意見もあった。ただし、筆者が以前にプレジデント誌で指摘したように、債務リストラは、危機国の債務負担を小さくして、財政危機からの立ち直りにはプラスであるものの、類似の財政危機の火種を抱えている他の国へ伝染させるという、諸刃の剣となる可能性がある。

これらの議論のなかで、マーストリヒト条約の下のユーロ導入の経済収斂条件が危機国の危機をさらに深刻化させるというプロ・サイクリカルなものであるという指摘もあり、経済収斂条件を緩和すべきとする意見もあった。さらには、現状においては、通貨主権の統合がなされているものの、財政主権の統合がなされていないことから、共通財政政策や共通ユーロ債の必要性と可能性についても論じられていた。これらの主張は、共通通貨ユーロの生き残り策として傾聴に値するものであるが、そもそもギリシャのように当初よりユーロ導入の経済収斂条件を満たしていなかったことを考慮に入れると、最適通貨圏の理論からユーロ圏を拡大しすぎたのではないかという疑問は残る。

(図版作成=平良 徹)