アメリカ南部のテキサス州で、原則的に妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を禁じる州法が発効し、全世界で波紋を広げている。NY在住ジャーナリストの肥田美佐子氏は「トランプ前大統領の誕生以降、共和党は政治的アプローチを変えた。今回の中絶問題も次の大統領選を見据えた共和党の戦略との見方がある」という――。
2021年9月4日、アメリカ・ニューヨークのタイムズスクエアで、テキサス州の法律が中絶を禁止したことに抗議する人々が集まっている
写真=AA/時事通信フォト
2021年9月4日、アメリカ・ニューヨークのタイムズスクエアで、テキサス州の法律が中絶を禁止したことに抗議する人々が集まっている

テキサス州で妊娠6週目以降の中絶を禁ずる州法が成立

大半の国民が人工妊娠中絶を支持するアメリカで、南部のテキサスやミシシッピなど、共和党の知事が治める州を中心に反中絶の動きが加速している。1973年、連邦最高裁判所が妊娠約24週目までの中絶を合法とした「ロー対ウェイド判決」から半世紀近く――。今、その歴史的判例が、21世紀の連邦最高裁によって覆される危機に見舞われている。

その背景にあるのが、2024年の米大統領選挙をにらんだ党派政治と「トランプ・エフェクト(効果)」だ。