アメリカのバイデン大統領は8月30日、アフガニスタンからの軍の撤退が完了したと宣言した。だが、現地では国際社会が支援してきたガニ政権が崩壊し、武装勢力タリバンに権力が移り変わった。上智大学の前嶋和弘教授は「バイデン大統領はガニ政権はもう少し踏みとどまると考えていた。その思惑は大きく外れた。これはアメリカの衰退を示してもいる」という――。
タリバンの電撃進攻を許したアメリカのインテリジェンスの弱さ
アフガニスタンではイスラム主義組織タリバンが全土をほぼ掌握しただけでなく、8月26日にはイスラム国組織ISIS-Kが首都カブールの国際空港近くで自爆テロを起こし、米兵とアフガン人を含む70人以上の死傷者が出る惨事となった。30日には1日予定を早めて米軍が完全撤退したが、今後もさらなるテロ行為が繰り返される可能性がある。
バイデン大統領にとっては誤算続きだ。何といってもアメリカのインテリジェンスの弱さは致命的だった。「パートナー」であったはずのアフガン・ガニ政権との関係もしっかりしたものとはいえず、有効な情報が流れてこなかった。そもそもアシュラフ・ガニ氏の敵前逃亡の可能性を予見できなかったのは致命的である。ベトナム撤退を髣髴とさせるカブールからの撤退も、その後の自爆テロの惨状も長年語り継がれるような大失態に見える。
アフガン政権は反タリバンの軍閥の寄せ集めのようなものであり、効果的な国家建設を行う能力には疑問符が付いた。前カルザイ政権の時から汚職が蔓延し、アメリカ側に実際の軍人の数以上の支援物資を請求するのも日常茶飯事だった。アメリカの場合、日本や韓国などでの戦争後の国家建設の「成功体験」があるが、アフガニスタンの場合、受け皿となるような政治システムも脆弱であった。