人口の多いシニア層の取り込みを狙う企業は増えています。マーケターの桶谷功さんは「『シニアご用達』のイメージがつくと、若い世代が離れていきますし、当のシニア層も「シニア向け」というイメージが強すぎるものを敬遠します。若いイメージを保ちつつ、シニアを開拓していく工夫が欠かせません」といいます――。
これまでのアパレルにはない発想
こんにちは、桶谷功です。
ユニクロ、メルカリ、そしてソニーのロボット犬「aibo(アイボ)」……。
一見バラバラで脈絡のないこの3つですが、マーケティングという観点から見ると、実は非常にはっきりした共通点があることにお気づきでしょうか。
その共通点とは、従来とは違う新たな顧客層の開拓に成功したこと。ユニクロもメルカリもaiboも、最近の動きを見ていると、その背後に「この層を取りにいくぞ」という明確な意思に基づいた戦略があることを感じるのです。
まずはユニクロから説明しましょう。
いま、ユニクロやその傘下にあるGUは、子ども服やベビー服に注力しています。衣服にかける世帯消費支出が下がり、みんなあまり服を買わなくなったなかでも、子ども・赤ちゃん服は非常に堅調。成長に合わせて買い替えるため、常に一定の需要が見込める分野ですから、ここを開拓する意義は大きい。
私が素晴らしいと思ったのは、子ども服を強化するにあたり、ユニクロやGUがいままでのアパレルにない発想をしていることです。
季節の先取りをしない
たとえばGU初のベビー服「GU Baby」では、「セパオール」というものを発表しました。これは一見、上下分かれたセパレートのように見えるけれど、実際はつながっていて脱ぎ着がラクというもの。ベビー用といえばオーバーオールという固定観念をくつがえしました。
またいままでのアパレルは、まだ暑くても店頭には秋物を並べたりして季節を先取りするのが常でした。でも子ども服はいざ着せようとすると、「あっ、去年の服が小さくなっていた、入らない」となることが多い。そんなとき季節を先取りされていると非常に困ることになります。しかしユニクロやGUに行けば、いますぐ着られるものが並んでいる。