資生堂の中国事業が好調
こんにちは、桶谷功です。
資生堂の中国事業が好調です。同社の2020年度の決算報告では海外比率が全体の60%以上を占めていて、その中でも特に売れているのが中国。日本国内での売り上げが全体の33%であるのに対し、中国は全体の26%と日本に迫る勢いです。しかも海外のほかの国は新型コロナウイルスの影響で売り上げが低迷しているのに、中国のみが前年比9.0%プラスを達成している。これは中国がいち早くコロナ禍から脱したことを示しているのでしょう。
また2021年のセグメント別売上高の見通しを見ると、日本が3460億円、中国が3135億円となっています(図表1参照)。それとは別に空港の免税店や機内販売などの「トラベルリテール」という免税事業のセグメントもあり、こちらは1065億円の売り上げがある見通し。そのなかには香港のすぐ近くにあるリゾート地「海南島」での売り上げも含まれています。海南島は、いま免税アイランドの一大リゾート地となっており、中国人観光客も外国人と同じように免税で買物ができます。そのため、新型コロナ禍で海外旅行ができない富裕層が、中国全土から殺到し、免税品を買いまくっているのです。
「中国人向け」の商品をつくるリスク
このような状況ですから、資生堂は中国事業を強化しようとして、中国に研究開発拠点を新設し、中国の消費者向けの商品を開発して、それを売ろうとしています。しかしそこには大きなリスクが潜んでいると思われてなりません。
実は中国の人たちは、自分たちに向けてつくられた製品を嫌います。製品の製造過程に、自国の中国人が関与していなければいないほどいい、というのが中国の主要都市で数多くの家庭訪問調査を行い、実際にインタビューをした結果です。
いちばん避けたいと思われているのが、中国人によってつくられ、中国人によって流通している一般の中国製品。だから中国の人たちは赤ちゃん向けの肌着、おむつ、哺乳瓶、粉ミルクのように安全性が気になるものや、大人用でも直接肌に触れる下着やスキンケア用品などは、中国製より信頼できる外国製品を選びたいという気持ちが強いのです。中国南部の広州市に住む、ある子育て期のお母さんは、絶対に中国製の粉ミルクを飲ませたくないので、わざわざ香港まで日本製の粉ミルクを買い出しに行くということでした。