「自分たちのためにつくられたもの」がうれしくない心理
資生堂は、製造は日本国内の工場で生産するとしています。しかし、商品開発はあくまで中国の消費者向け。スキンケアであれば、中国の人の肌に合わせた商品を開発することになりますが、売り出すときにそこをアピールするかしないかは、本当に慎重に決めるべきだと思います。
人間には不思議な心理があって、ものによっては「あなたのための商品です」と言われると、欲しくなくなるところがある。たとえばシニアの女性が、シニア向けと露骨にうたわれている化粧品を買いたいかといえば、いくら機能性に優れていても買いたくないでしょう。なかには「シニア向け」とはっきりうたったほうがいいものもありますが、化粧品などのプロモーションのときは実際のターゲットよりも若干若めに設定するのが王道というもの。
自分たち向け=低品質と連想してしまう
あるいは男性向けのゴルフクラブを売るとき。実際にゴルフをプレーするのは年配の男性が多いけれど、「シニア向けの打ちやすいクラブですよ」といって売り出したら絶対に売れません。「アスリート向け」を装ったうえで、実は力のないシニアでも飛距離が伸びる、というふうにしなければいけない。
中国の人たちにも、そういうところがあります。今まで、欧米や日本のメーカーが中国で現地生産してきた製品は、たいてい本国で売られている製品より廉価版のものが多かったため、「私たち向けの製品って、どうせ安い低品質のものなんでしょ」という連想が働くようです。だから、「中国の人向けに開発しました」と大々的にうたうと、そっぽを向かれるおそれがある。それよりも、「日本でヒットした商品を中国に持ってきました!」と言ったほうが、むしろ好意的に受け止められる可能性があります。