盲目的な愛国心を持つアメリカ人は減ってきている
しかし学校教育が不十分でも、今や真実を知りたい若者はアメリカ人、日本人を問わず、インターネットやドキュメンタリー映画などから必要な情報を得ていく。
そもそもアメリカという国は建国時代から不都合な歴史を隠して成り立っている国だ。その最たるものが奴隷制をはじめとした人種差別で、コロナをきっかけにそれがブラック・ライブス・マター(BLM)運動として噴出したのである。奴隷制についても学校ではほとんど教えられないが、数年前からニューヨークタイムズなどのメディアが教材にもなるようなプロジェクトを組み、若者たちは今、乾いた砂のごとくそれを吸収している。
経験していないだけにヒロイズムや愛国心を振りかざされても彼らの心には響かない。逆に何かがおかしい、どうやら教えられていない真実があるというモヤモヤした気持ちが、教育が不十分と感じる理由とも考えられる。
今では9.11直後のような、盲目的ともいえる愛国心を持つアメリカ人はかなり減ってきている。むしろ、これまでの間違いを正せなければ自分の国を愛せなくなってしまう、こうした態度が若者をさまざまな社会運動にかき立ててもいる。こうした若者によりアメリカが内側から少しずつ変貌しているのは、9.11から20年たった今大きな希望に感じる。
しかし、まったく関心がない若者が多いのも事実だ。知らなければ何も考えずに生きていける、そのほうが楽だから。
「間違った情報は大量破壊兵器だ」。イラク戦争開戦の翌年、2004年にリリースされたイギリスのエレクトロ・バンド、フェイスレスの「Mass Destruction=大量破壊兵器」という歌詞の一節を思い出したが、教育の不足も同じかもしれない。