しかしこれが理解できていないのは若者に限ったことではない。アフガニスタン戦争は“忘れられた戦争”とも言われ、この20年間アメリカ国内でも大きく報道されることがほとんどなかったからだ。
ブッシュ大統領が9.11直後に国民の大きな支持を得て始めたものの、結果をなかなか出せず、イラク戦争にも手を染めることとなる。10年後にようやく首謀者のオサマ・ビンラディン容疑者を殺害したものの、戦争を終わらせようとしたオバマ大統領は、対抗勢力が優勢の議会で反対にあい止めることができず、さらに10年の月日がたってしまった。政府がこんな失態を国民に知られたくないと思うのは当然だろう。
現在進行中の歴史を教える難しさ
グラウンドゼロ(爆心地)の跡地には現在、9.11メモリアル&ミュージアムがある。
今回、東京FMの報道番組「ニュースサピエンス New York Edition」の9.11特集のために取材した。ミュージアムは9.11犠牲者を追悼し歴史を未来に伝えることが使命だが、その教育担当のジュリアン・オルーキンさんはいう。
「9.11が終わっていない、今とつながっていることを教えるのは重要。でもまだ結果が出ていない歴史を教えるのは難しい」
だからこそすでに分かっていること、9.11当日の悲劇や、自分を犠牲にして救出に当たった消防士などのヒーローや、力を合わせて復興に努めたニューヨーカーの団結などをまずしっかり教えることが重要だという。そのための教材も多数用意し、教師や生徒が自由に利用できるようにしている。
しかしその結果、ヒロイズムばかりが強調され、愛国心に偏るばかりに戦争で犠牲になる兵士や他国民、国内で差別されるイスラム教徒を慮ることがなさすぎるのではないか、何よりもテロの原因となった背景がろくに教えられていないと批判する声もある。
では、現在のアフガニスタンの状況についてZ世代はどう考えているのだろうか。
「逆上して発作的に始めた無意味な戦争」
「戦争をやめたのはよかった、でももっとうまいやり方はなかったのだろうか。取り残された人々はどうなるのだろうか」
これは若者に限らず、多くのアメリカ人のリアクションだ。しかし大人と若者が違うのは、9.11を経験していない若者のほうが事態を冷静に受け止めていることだ。
アフガニスタン戦争が9.11の報復によるものだと知らなかった前出の高校生は、それを知ってどう思うかという質問に対し、「あまりにもひどい経験をしたために逆上して発作的に始めてしまった戦争ではないか」と答えた。
そして「20年もやって何もよくならなかった。これ以上駐屯して意味があるとは思えない」と付け加えた。