ラボのメンバーのメアリーはこう言う。

「戦っているのには理由があるが、その理由を知れば知るほどアメリカが過ちを繰り返しているようにしか見えない」。繰り返しているというのは、その前にあった湾岸戦争やベトナム戦争などのことだ。

「自分たちの都合で他国の政府を破壊し、タリバンを倒すために行った戦争なのに、力の空白地帯を作りテロの原因を作ってしまった。この戦争に何の意味があったのだろうか。報復だけでなく、石油か何かの資源が目的だったのでは」

こうした見方は、今や若者には珍しいものではなくなっている。

冷静な意見が多い一方、陰謀論も

ではもしこれが無意味な戦争だったとしたら、学校は同じ間違いを繰り返さないための教育を行っていると思うかとも質問してみた。彼らの答えは口々に「ノー」である。

モニュメントに刻まれた犠牲者の名前。遺族などが献花に訪れる=筆者撮影
モニュメントに刻まれた犠牲者の名前。遺族などが献花に訪れる=筆者撮影

9.11を知らないZ世代は、これほどの長い間莫大な予算をかけて多くの人の命を犠牲にする戦争そのものを否定的に見ている。そして戦争にお金をかけるくらいならもっと教育に使うべきだというのも共通した意見だ。

テロとの戦いのために派兵は当然だったと考える当時の大人たちに比べると、アメリカ人がどれほど変わってきたかが分かるだろう。

一方で興味深いのは、9.11直後に広まった陰謀論が再び若者の間で広まっていることだ。当時はワールドトレードセンターが崩壊されたことに対し、「ビルの鉄骨が航空機の燃料爆発だけであそこまで破壊されることはない。何か爆発物が仕掛けられていたのではないか」との憶測が広まった。

政治や政府への不信が、こうした陰謀論を生むことは言うまでもない。

太平洋戦争をはっきり答えられない日本人と重なる

アップルのiPhoneに入っているニュースのポッドキャストは、アメリカの若者に多く聞かれている。8日朝のトップニュースは「9.11同時多発テロの首謀者らがいまだに法廷で裁かれていない」というものだった。事件から20年たってもキューバのグアンタナモ収容所に拘束されたままになっている理由として、政府が証拠文書を出したくないからだと分析している。

公判の日程さえ出ていない現状について、彼らは拘束されたまま永遠に裁かれることはないだろうという専門家さえいる。

一方バイデン大統領は、これまで機密としていた文書の一部を今年の9.11後に順次開示すると約束した。テロへのサウジアラビアの関与を疑う9.11遺族からの圧力に応じた形だが、同じ要請は2019年にも行われ、トランプ政権に拒否されている。

国家の安全保障に関わるからとはいえ、9.11を取り巻く状況にはあまりにも秘密が多いのだ。

こうしたアメリカの現状は日本の歴史教育とも重なる。太平洋戦争が起こった原因や背景を、はっきり答えられる日本人がどれだけいるだろうか?