<strong>精神科医 香山リカ</strong>●『しがみつかない生き方』がベストセラーに。立教大学現代心理学部映像身体学科教授も務める。
精神科医 香山リカ●『しがみつかない生き方』がベストセラーに。立教大学現代心理学部映像身体学科教授も務める。

誰もが「インフルエンザで体調が悪いのなら休めばいいのに」と思うところです。しかし、その一方で「キャンセルすると自分の評判が落ちるんじゃないか」「信用を失ってしまうのでは」と迷ってしまう。そんな思考を私は自己中心的な考え方だと見ています。

評判が落ちるのも、信用を失うのも自分です。そこからは相手のことを慮る気持ちがうかがえません。体調が悪いのに無理して出かけても、相手に病気をうつすリスクがあったり、「そこまでしてくれなくても」と心理的な負担を与えることもあるというのに。

もちろん直前でキャンセルされて喜ぶ人はいないでしょう。しかし人間誰しも、病気になるとか、家族に不幸が起きる可能性があることはわかっています。立場を逆転させて自分が顧客側であったら、「お互い様ですよ」と言うはずです。それなら、きちんと休養を取って、万全な体調で再度臨んだほうがいいのではないでしょうか。

なかには「自己管理が悪いと叱責されるのでは……」と心配する方もいるようです。でも、心配は無用です。人は自分の思い通りにいかないことや不満なことがあると、必ず何かほかのせいにしたがるもの。上司や先輩に自己管理の甘さを批判されたら、「何かうまくいかないことがあって、その苛立ちが自分に向かっているんだ」と、一歩引いて考えてみてはいかがでしょう。もちろん口では謝罪するのがマナーです。