だれでも苦手な人がいる。私も家に……

土屋賢二氏
土屋賢二氏

だれにでも苦手な人はいるものです。妻と2人暮らしのわたしにも、家に苦手な相手が1人います。職場には100人ほどいます。しかしどんなに苦手な相手でも対立していいはずはありません。対立してはいけない十分な理由があります。

苦手な相手があなたのリストラを決める上司になるかもしれません。船が沈没して救命ボートに乗せる最後の一人を選ぶ立場に相手が立つかもしれません。あなたが裁判にかけられたときの裁判員になるかもしれません。配偶者なら毎食、毒を盛るかどうかを決める立場にいます。だれでも人の好意に頼らざるをえないのです。

第一、人との出会いは一期一会、貴重です。どんな人にも個性があり、カブトムシと同じぐらい観察する価値があります。部分的に変人だとか、すべてに常識的だなど、十分に楽しめるはずです。

人との対立は避けなくてはならないと明確に知ることが決定的に重要です、それを知ればあとは簡単です。会話すればいいのです。中元も歳暮もいりません。現にわたしは中元も歳暮も贈らないで何とか妻とつき合っています。会話の仕方は少し考えればわかります。

話題は重要ではありません。天候(「コタツが恋しくなりましたね」)、相手の服装(「それいいですね。どこで買ったんですか」)、休日(「連休は子どもがせがむので休めないんです」)、家族(「子どもが言うことを聞かなくて」)、スポーツ(「どの解説者がお好きですか」)など何でもいい。大事なのは自分の欠点を会話に入れることです(「小便のキレが悪くなって」「家で孤立していて」)。その理由は明瞭です。「こいつは格好をつけている」「気取ったヤツだ」と思われたら心を開いてもらえないからです。