H&Mとイケア。高収益体質を誇るスウェーデン発のグローバル企業だ。日本企業ではありえないほどの上下関係のよさ、社員の成長力はどこから生まれたのか。世界各地で業績を伸ばしてきた両社の強みを探った。

上司も社長も呼び捨てにする風通しのよさ

現場の社員が社長の名前を呼び捨てし、有給休暇消化率は100%――。一見、なんの関連もないように思えるが、イケアとH&Mの共通点だ。

ともに1940年代に創業したスウェーデン発のグローバル企業。イケアは世界各地に270店超、12万7000人の従業員を擁し、売上高は2兆9000億円。2006年4月に日本に再進出し、5店舗の売上高は520億円(09年8月期)を超え、家具小売業では業界3位。1店舗当たりの売上高はニトリの13億円強をはるかに上回り、純利益率も11.6%(09年)と驚異的だ。

一方、H&Mの世界2200店舗の売上高は1兆6000億円(10年度)。1店当たり7億円超の売上高はファーストリテイリングの約3.7億円を上回り、売上高営業利益率もファーストリテイリングの約16%に対し、20%を超える高収益体質を誇る。日本には08年9月オープンの銀座店を皮切りに原宿、大阪店など12店舗を開設。銀座、原宿店の売上高はともに50億円を超える好調ぶりだ。

両社の高収益体質は、自前の工場を持たないファブレス、物流網のコスト管理といったビジネスモデルだけではない。それを支える社員のモチベーションを重視した人的資本の活性化策も見逃すことができない。

共通する経営スタイルは「社員の自発性を重視する徹底したボトムアップ型経営」といってもいいだろう。H&Mの創業当時からの価値観は「人を大切にし、人材の持つ能力を尊重することを基本としている。その能力とは、自発的に行動し、限界に挑み、アイデアを提案する勇気を持つこと」だ。そのために「フラットな環境をつくることに力を入れている。アルバイト、正社員に限らずスタッフがマネジャーに販売方法を含めてこうしてほしいと自分の思いを率直に伝えることができる環境が大事だ」(山田祐介HRマネジャー)という。

イケア・ジャパンの下風亜子・カントリーヒューマンリソースマネジャーも「オープンなカルチャーとオープンコミュニケーションからアイデアが生まれてくるという考え方がベースにある。ポジションによってコミュニケーションがしづらいということはまったくない」と指摘する。