ドメスティック企業の典型であるコンビニ。国内が飽和状態になるなかで、どう海外へ出ていこうとしているのか。多様性とリーダーシップを育むローソンの人材育成を取材した。
店舗展開も人材採用もキーワードは多様性
国内店舗数4万店を超え、飽和状態にあるコンビニ業界。新たな成長ステージに向けた事業戦略を各社模索しているが、ローソンのキーワードは店舗を核にした「業態の多様化」だ。
若い女性を対象にした健康志向型店舗「ナチュラルローソン」、均一価格で提供する「ローソンストア100」、小分けした生鮮品を販売する「ローソンプラス」など様々な店舗を展開している。拡大一辺倒ではない。それぞれの土地柄や客層のニーズに合わせた店舗フォーマットの多角化だ。
一見、非効率にも思えるが「競合店がひしめく場所に普通のローソンを出店すれば、収益に多少の影響が出る。商圏や客層が被らないローソン100を出店すれば競合をブロックし、収益を維持することができる」(日野武二ヒューマンリソースステーション人事企画部長)という効果もある。
もう一つの特徴は、一般の小売業とは違い、1万店のうち直営店はわずか200店舗というフランチャイズビジネスであること。そのため、「商圏や収益構造を考えながら加盟店主に売り上げを伸ばすためのノウハウを提供するコンサルティング」(日野人事企画部長)が社員の重要な仕事になる。
加盟店主との良好な関係を築きながら、エリアや客層を考慮した最適な店舗スタイルを提案し、収益向上を図るのは、上に言われて動く従来型の上意下達型人材では難しい。「現場に向き合い、自ら考えて最適解を見出す自律型人材」(中村剛ヒューマンリソースステーション人財開発部長)が求められている。
ではこのビジネスモデルを支える人材をどのように育成し、配置しているのか。じつはすでに採用段階から始まっている。同社は2005年の学卒採用から女性、続いて08年から外国人の積極的採用を推進しているが、近年の平均の採用比率は外国人が3割、女性が5割を占める。ここでもキーワードは「多様性」だ。
「ナチュラルローソンなどの様々な店舗やeコマース事業、それから海外出店など積極的にチャレンジしていくうえで企業風土もモノカルチャーだけではやっていけない。受容性が高く、柔軟な組織風土の中で様々な人がいろんな意見をぶつけ合うことでアイデアも生まれ、組織も活性化する」(日野人事企画部長)