「我々が目指しているのは、どの国、どの地域であってもお客様にとって欲しいときに欲しいものがあることだ。第一フェーズとしては、日本で培ったローソンの商売のやり方を移植していくことが重要であり、まずは現地法人に経営陣を派遣してやったほうが拡大は早いと思う。第二フェーズとしては、これはあくまでも私見だが、やはりローソンの価値観や理念を現地の人たちが理解し、しっかりと執行できるようになれば、現地の人材に経営に参画してもらい、我々がサポート役に回ったほうが事業としてもうまくいくのではないか」

小売業各社のアジア進出は始まったばかりであり、いずれ「人材の現地化」が大きなテーマになる。その前に最大の課題となるのがグローバルに活躍できる人材の確保と養成だ。その点、ドメスティック企業の典型であるコンビニ業界にあって外国人比率の高い多様性のある組織が重要になる。日野人事企画部長は「柔軟で受容性の高い組織は、海外でも通用し、いつでも海外に赴任できる人たちの層を厚くするという意味でも重要な鍵を握っている」と指摘する。

ローソンのDNAを受け継ぐ外国人の社員に限らず、その中で揉まれた日本人社員を含む受容性の高い組織はグローバル人材のインキュベーターになる。すでにそうした経験を持つ社員が重慶に赴任している。

「神奈川県の支店長クラスの社員だが、彼の下に日本語があまり上手ではないバングラデシュ出身の部下がいた。非漢字圏ということで日本語のレポートをうまく書くことができなかったが、懇切丁寧に指導し、夜中までかけて文章をチェックしてやるなど非常に面倒見がよかった」(中村人財開発部長)

中村人財開発部長は海外で活躍する人材に共通する要素としてリーダーシップと受容性を挙げる。

「語学ができるにこしたことはないが、通訳を使ってもマネジメントはできる。大事なのは日本で培ったビジネスセンスに加え、面倒見のよさを含むリーダーシップと相手を理解し、受け入れる受容性の高さだ。そうした要素を持つ人材を養成し、海外に送り出すことが何より大事だと考えている」

何より多様性のある企業風土を醸成すること。そして入社後の店長経験を含む一連のOJTを通じてリーダーシップを磨くこと。グローバル人材の養成において最も肝となる部分を的確に捉えている。