フラットな環境を醸成するため、両社では社員全員がファーストネームで呼び合っている。H&Mの山田マネジャーの呼び名は“ユースケ”だ。
「最初は違和感を持ったが、そういうきっかけをつくらないと自分の思いをストレートに伝えられない。逆に部長と呼ばれる側も、ディフェンシブな思いが働き、率直に聞いて、意見を言うことが難しい面もある。ファーストネームで呼び合うことで相手も言いやすいし、聞きやすい」(山田マネジャー)効果があるという。
イケアも社長のミカエル・パルムクイスト氏を「ミカエル」と呼ぶ。「最近は社員にミカエルが多くなってきたので“ミカエルP”と呼んでいる」(下風マネジャー)という。
両社は上司と部下、組織を超えた対話(ダイアローグ)を促す仕組みづくりにも熱心だ。
H&Mでは年度末の人事評価の時期と中間期に上司と部下が一対一で1時間の対話を行う。しかも上司が一方的に話すのではなく、部下の話を聞くことに80%の時間を割くのが原則だ。
「スタッフが自ら設定した目標について、半年後に進捗を確認し、目標の達成が難しい場合は改めて設定したり、すでに達成していれば新しいゴールを設定するなどフォローする。年度末には、1年間やってきたことについて振り返る。また、短期的なキャリアや将来のキャリアの希望についても質問する。たとえばマーチャンダイザーに興味がある場合、実力次第では人事に報告し、実現を図るようにしている」(山田マネジャー)
日常でも同じだ。上から一方的に決めつけるのではなく「ミーティングでも、まず『どう思う?』と相手に意見を求めるのが普通。相手から意見を引き出してジャッジするやり方をしている」(山田マネジャー)という。
全社単位の大がかりな対話の仕組みを実践しているのがイケアだ。同社はパートを含めた全社員が職場、店舗単位で自社のあり方について議論し、最終的にイケア・ジャパンの戦略として練り上げていく活動を半年間かけて行う。まず、現場の声を吸い上げる作業からスタートする。
「顧客や商品、ビジネスのトレンドをよく知っているストアの社員が、1年間を振り返り、足りないものは何か、もっと強化しなければいけないことは何かについて皆で議論する。そこで出た様々な意見を吸い上げ、次に部門横断的なプロジェクトで揉んで、イケア・ジャパンのカントリービジネスプランを仕上げていく」(下風マネジャー)