2002年に発表されたSMAPの楽曲「世界に一つだけの花」は、いまや国民的楽曲として定着している。しかし、そのメッセージに苦しんでいる人もいる。ライター・編集者の中川淳一郎さんは「現実には大半の人は夢をかなえられない。夢をあきらめる人生のほうが、絶対に幸せになれる」という──。
花
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「夢」は多くの人を不幸にする

加速するばかりの少子高齢化に伴い、すっかり低成長国家となった日本。現時点でもすでに若者が割を食う社会になっているが、今後はますます若者がラクには生きられない国になっていくだろう。

そんな国において、若者は一体どんな夢を見て、どんな将来を思い描けばよいのだろうか。

先に結論を述べてしまおう。夢なんていらない。夢は多くの凡人、そして運のない人を不幸にする。むしろ夢なんて抱かないほうが幸せに生きられる。

昨今、子どもたちの憧れの職業はYouTuberだと聞く。たしかに彼らのなかには、人気者になって膨大な再生数を叩き出し、下手な芸能人よりも稼いでいる人が存在する。だが、YouTuber全体を見たとき、収益化に成功している人は果たしてどのくらいいるのか。さらに、儲かってウハウハ……なんてYouTuberは0.0何パーセントだろう。「YouTuberになるのが夢」という子どもを否定するつもりはないが、結局、これは「夢」ではなく「妄想」にも近いものでしかないのだ。

世界に向けて情報発信、とはいうけれど

インターネットがあれば、世界中からカネを集めることができる――そんな夢が語られることもあるが、現実には「日本語」という超マイナー言語の壁もあり、世界を相手にするのはなかなか難しい。英語で情報発信をする芸能人、アスリート、政治家、ジャーナリストのツイッターのフォロワーの多さは、日本人とはまったく比較にならぬレベルなのだ。たとえば、日本の芸能人でフォロワー数1位の松本人志はおよそ818万人だが、ジャスティン・ビーバーのフォロワー数は1.1億人である。

英語を上手く使いこなして情報を発信できれば、もしかしたら世界から潤沢な広告費を集めることもできるかもしれないが、日本語しか使えないのであれば、日本という狭い島国のなかだけで細々とパイを奪い合うしかない。